コンコン!!
「あー…。なるほど。こうなる訳ね。」
三郎の鬘から、ぴくぴくと動く二つの耳。三角の形をした全体は黄土色で、先だけ白い。
まさしく、狐の耳だ。
「…常々狐に似てると言われてきたが、本当にこうなるとはなぁ。」
淡々と呟きながら鏡の前に座った三郎の尻からは、ふさりと手触りのよさそうな耳と同じ色をした長い狐の尻尾。
一応自分の意思で動くようで、三郎はふりふりとそれを振って見せた。
「おお…、ちゃんと動く。」
ふかり、と振れた尻尾は思ったより触り心地が良く、それに知らず笑顔になりながら三郎はその感触を楽しんだ。
慣れない体験に思いの外夢中になっていたようで。
「あれ?三郎帰ってきて、」
スラリと開いた戸に、ようやく部屋の外の気配に気がついた。
振り向いた先で、雷蔵が目を見開いて固まっている。
「…………………。」
「…………………。」
「…………………。」
「……………こんこん?」
ふざけて手を獣のように顔の下で丸めながら、とりあえず三郎は小首を傾げて雷蔵を見上げてみた。
ふさり、とオプションで尻尾まで動かしてみて、可愛らしさをアピールしてみる。
だが。
三郎の狐の耳は、たしかにプツリと何かが切れた音を聞いた。
「え?らいぞ、」
「なに三郎。なにそれ。すごいかわいいんだけどなにそれ。どうなってるの?」
瞬き一つしないままに雷蔵が三郎に詰め寄る。ビクリと体を震わせた三郎は逃げるように体を後ずらせた。
(ら、らいぞう…なんか、いつもより、こわい…?)
大好きな雷蔵の笑顔が、なぜかいつもより怖く感じる。まるで、猟師に狙われた獲物の気分だ。
警戒して後ずさる三郎に、雷蔵は一瞬キョトンとした顔になった後二コリと微笑んで近付くのを止めた。
「すごいね。勘も狐並みになったのかな?」
「ら…らいぞう?」
大好きな笑顔だ。いつもの自分なら飛びついているのに。
三郎はその笑顔が今とても怖かった。
「でも、逃がさないから。」
「へっ!?」
どさりと床に押し倒される。
とびきり良い笑顔の雷蔵は優しい笑顔で、とても恐ろしく三郎に囁いた。
「おもいっきり、愛でてあげる。」
「ら、らいぞ…っ、あ!あーーーー!!」
そしてその日起こったことを、後の三郎は決して語ろうとすることはなかった。
あとがき
少し警戒心が強い狐さんな三郎!!きっと尻尾はとても美しいに違いない。
楽しくてしょうがないのはきっと私だけ(笑)
続きエロは気がむいたり応援されたり希望があれば書くかもしれない。→書きました!!