※三郎の出生について100%ねつ造しています!!
いろいろとあり得ない設定が満載です!!暗い表現があります。
読んだ後に不快感を覚えても苦情は受け付けません。
苦手な方はここでお戻りください。

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最初


これは、私の出生の話――。


片手で数えるほどの人間しか知らない私の過去――。




私は両親の顔を知らない。
異形の姿で生まれ出でた私は、常人の入らない深い森へと捨てられた。
それが両親の手によるものなのか、それとも他の人物の手のものなのかは乳幼児であった私に知る術はない。
その行為が餓死を目的としたのか、はたまた獣に食い荒らされることを望んだのかも知らない。ただ、そのまま死に至るはずだった私を救ったのは、奇跡と言っていいほどの偶然だった。
森に住み着いた気の狂った男が、なんの偶然か私を育てた。
支離滅裂な戯言ばかり吐く目の虚ろな男だった。そんな男に拾われ育てられはしたものの、それは幸福とは程遠い生活だった。気狂いの男は時折私を殴り、その度に私に食事をさせた。それは子どもに対する罪悪からか、それとも何かの儀式だったのかは今となっては分からない。しかし、私はその食事によって奇跡的に生き延びることができた。
やがて、足だけで歩けるようになったころ、私は痛みから逃れるために走ることを覚え、獣のように獲物を捕るために手を使うことを覚えた。
私の生活はだんだん男から離れていき、いつの間にか男は完全にいなくなっていた。
それを疑問に思うことなく私は森での生活を続けた。

そんな中、時折武器を持った人間に会うことがあった。彼らが私を見つけたとき、私に対する反応は大体二通りに分かれた。
顔を青ざめさせ、耳ざわりな叫び声を上げ、攻撃するもの。
何を勘違いしたのか、深く頭を下げたまま食べ物を差し出すもの。
圧倒的に前者が多かったが、そんなやつらにはもちろん仕返しをして追い払い、後者の奴らには何もせず食べ物だけもらった。
一度だけ、赤や黒の、きらきらしたものを纏ってやって来る人間がやってきた。長い銀色の棒を振り回し、あたりの木や草、動物をなんでもかまわず切りながら私を追いかけてきた。
ガシャリガシャリと音を立てて私を見つけるたび、私は恐ろしくて逃げ回っていた。
攻撃しようと近づけば、他のモノのように切られ、打ちすえられる。
暗い、真っ黒な目が私を見つめる度に、感じたことのない恐怖があった。
しかし。
何度か追いかけられているうち、私の方が足が早いことに気づいた。
何度も会う度に、纏っているものがとても重いものだと気付いた。
そして私は、
怖い怖いそれを、深い谷へ誘い、
暗い底へ落としたのだ。


人間を殺すのはそれが始めてだった。
いつもは、多少傷をつければ去っていったのに、あの人間はひるむことなく私を追いかけるから。
切られた傷が熱かった。
打たれた痕が痛かった。
怖かった。
もう動かなくなった人間を見て、やっと心が安らいだ。


そして、森が私の体の一部となり、その中を自在に走り回れるようになったころ。私は「人間は敵」だと認識していた。奴らは無遠慮に森へ侵入し糧を奪う敵だと。そして私は自分が獣だと思っていた。この森で一番の力を持つ獣だと。
人間は、私のように早く走ることも、高く跳ぶこともできない。力にしたって私の方が使い方が上手い。
ならば、私は人間とは違う生き物だ。鳥が私より高く飛べるように。魚が私よりうまく泳げるように。私は私という一つの生き物なのだ。
そう思っていた。
今なら分かる。それがどれだけ孤独であったか。どれだけ悲しいことであったか。
それを、教えてくれる人はいなかったから。


そんなとき、また森に人間がきた。
黒い服に身を包み、高いところで髪と結っている人間をその時初めて見たのだった。いつもくる人間はいくつもの獣の皮を身にまとい、ぼさぼさの髪で派手な足音を立ててやってくる。あの恐ろしい赤と黒を纏った人間とも違う。その人間の足音はまるで自分が潜むときのように静かで、気配も目を凝らしてみないと消えてしまいそうだ。
あれも人間ではないのだろうか?
私は見たことのないその生き物を警戒した。
気配を消し、背後からじっと見つめる。
しかしその人間はぴたりと動きと止めてしまった。それから待てども待てども動く気配のないその生き物に、しびれを切らしたのは私のほうだった。
あまりにも動きがないので、もしこれで動かなければきっとあいつは木の仲間なんだと結論づけることにして、ゆっくりと私はその人間の前へと姿を現した。


そして、そのときのことは、いまでも印象に残っている。
大笑いしたのだ。あの男は。
それはもう気持ちよさそうに苦しそうに体を折り曲げて大笑いしていた。
私は驚き、混乱した。
「笑う」なんて行為を知らない私は、その男が腹に手を当てるのをみて、腹が痛いのかと思ったのだ。
いつ襲って来るかわからないのに、私はそろりそろりと男へ近づき、そっと腹へと手を添えた。そこに手を当てれば痛みが和らぐことを知っていたから。
男は、瞬きをして私の頭をそっと撫でた。
見つめたその目に、以前の人間のような恐ろしい色は無かった。
男は二言三言、なにかしゃべっていたが、当時の私に意味は理解できなかった。
ただ、その手が気持ちよくて、そんなことされたことなくて。…もっと、してほしかった。
だから、差し出された手を取った。



そして、私は男について森を出たのだった。
その男の名は鉢屋。
鉢屋 次郎之助という。
それが、私のはじまり。



あとがき
三郎出生話の三郎視点でした。


次郎之助(養父)視点

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