君の傍に居るために 後編
三郎が突然「もう傍には居られない」と言った日から、数日経った。
あれから約束通り三郎は僕の隣で幸せそうに笑っている。
あのときは何を言われたかと思ったが、三郎が僕を嫌うはず無いと根拠も無く確信していたからすぐにその言葉を撤回させることが出来た。
しかしすんなり三郎の告白を受け入れることが出来たのだから、僕も随分前から三郎がそういう意味で好きだったのだろう。
だからこそ、今のこの感情を持て余している。
三郎は今、兵助の部屋に行ってしまってここには居ない。
前から仲は良いなと思っていたが、何度か口づけを交わす仲になってもそれは変わらなかった。
二人で居られるというときも、三郎は兵助の処に行ってしまう。
以前理由を聞いたら、悩んでいる時に随分助けてもらったのだという。
そのことにまた苛立ちを感じたが、それを押し隠して僕はただ「そう。」と頷いた。
(僕が、三郎が悩んでいるのも気づかなかったとき、兵助は…。)
結局は僕が悪いのは分かってる。三郎を悩ませて、傷つけていたのはほかでもない僕で、兵助はそれを慰めていたのだ。
本当なら、僕から詫びを入れなくていけないぐらいなのに。
でも、僕が兵助に感じている感情は、嫉妬だ。
いや、兵助だけだったら、まだ治まりがついたのかも知れない。
だが三郎は、どんな人間にも好かれていた。
仲間内はもちろん、上級生や下級生にも。
三郎が嬉しそうに笑うのを見る度、その顔をこっちに向けたくなる。
その笑顔は僕のものだと叫びたくなる。
異常だ。こんなの。
ふぅ、と僕はため息を吐いて立ちあがった。
こんなに部屋に籠もってるからそんな暗いことばかり頭に浮かぶんだ。気分転換に散歩でもしてこよう。
だが神様は、三郎を傷つけた罰をいまだに僕に与えるらしい。
「三郎!!」
その名前に反応して振り向けば、兵助に抱きつかれる、三郎の姿。
目の前が真っ赤になった気がした。
「……なにしてるの?」
「あ!雷蔵!」
「雷蔵。今三郎から詫びだって豆腐貰ったんだ。町で一等良いやつ!!」
なんでもないように振り向く三郎も、満面の笑みで桶を見せる兵助も、僕には見えていなかった。
「とりあえず、その腕を離してくれる?」
「ん?ああ悪い三郎。」
「いいや。」
ようやく離れたその体を引っ張り、僕の腕の中に閉じ込める。
「ら、雷蔵?」
「兵助。僕からも今度礼をさせてくれ。迷惑を掛けたね。」
「あ、ああ気にすんな。」
「今日は持ち合わせがないから、これで失礼するよ。」
「ああ………。」
三郎は何か僕の不穏な空気を感じたのか、不安気に僕を見上げている。
兵助は微妙な顔をしながらも口出しをするつもりは無いらしい。
だがそれらを無視して僕は三郎の腕を掴んで長屋へ戻った。
「ら、雷蔵?どうした?」
三郎の体を引き摺って部屋に二人で入ると、三郎が上ずった声を上げた。
僕は無言でその体を抱きしめて、三郎の首筋に顔を埋める。
「雷蔵?」
「ねぇ三郎。なんで僕以外の人に抱きつかれてるの?」
「え?」
「三郎は、僕のでしょう?」
「ら、らい…うわ!!」
体重を掛けて三郎を押し倒す。力の強くないのと驚きで三郎はあっさりと床に倒れた。
見下ろした三郎は、まだ驚いた様子で僕を見上げている。
その様子が可愛くてふと微笑むと、少し三郎の体から力が抜けたのがわかった。
「雷蔵、どうした?」
「…三郎、ねぇ三郎。もっと僕を見てよ。僕しか考えないで、僕の隣で、僕だけに笑って。」
伸ばされた指に口づけして、それを咥える。
形をなぞるように一つ一つ舌を絡めると、口内で指先が震えた。
「…感じた?」
「ばっ、な、」
「…もっと感じて。僕だけ見て。」
「らい、ふ、んぅっ!」
いつも軽く触れ合わせることしかしなかった口づけ。
だが今日はそんなことじゃ済まさない。
僕は舌で唇と歯列を割って三郎の口内へ侵入させた。
「くぅ、ん…。ふっ、んゃ、っん。」
拒絶の言葉も塞いで飲み込んで、僕は押し返そうとする三郎の舌も絡め取り強く吸いつく。その舌に力が無くなると、上顎を擽ったり歯列をなぞったりして三郎の性感を探った。
時折ピクリと体が震える部分を集中的に弄れば、いつからかぐったりと三郎の体が弛緩していた。
それを見てようやく口を離すと、つぅ、と銀色に光る糸が僕らを繋ぐ。
すぐに切れたそれは三郎の目にも映っていたようで、少し顔を赤くしていた。
「ぃぞ…なんれ…?」
「三郎を、僕のものにするためだよ。」
弛緩した体から衣服を脱がせる。すぐに露わになった体に、思わず息を飲んだ。
今の口づけで感じたのだろうか、起ちあがっている胸の突起と、三郎自身に目が吸い寄せられるようだった。
僕の頭は自然と胸に吸い寄せられ、手は下へと下がっていく。
口内を弄る穏やかな快感とは違う刺激に、三郎の体が跳ねる。
「ひゃっ!あ、あ!?なん、胸、あ!したも!!らめらってばぁ!!!」
「三郎、舌痺れちゃった?」
さっきから舌がもつれているようだ。舌ったらずのようなその口がまた可愛いのだが。
「やぁああ!らめ、あっ、あぅ、ひぃん!あぁああ!」
「三郎。」
僕は体を伸ばして三郎に小さく口づけた。
「ねぇ三郎、気持ちいいだろう?」
「あ、アっ、わかんな、ぁああんっ。」
「わからない?」
「からだ…んっ、じんじん、するよぉ」
「そっか。気持ちいいんだ、三郎。もっともっと気持ちよくしてあげる。」
「あっ、や、ああああああ!!」
「僕の手で、ね。忘れちゃいけないよ。」
達した三郎の白濁を、その唇に塗りつける。
「まずは空っぽになるまで出してみようか?」
「ひぃぁあ!アアア、あ!ぁん!やぁあああ!らめいっちゃ、いっちゃ、ああああああああ!!」
白濁に濡れた手で再び三郎自身を強く扱けば、またその上に吐き出される白濁。
それを満足そうに見つめて、僕は体を下げた。
「ふふ…すごい。二回も出したのにまだぴくぴくしてるね。」
「ふぁ、は、ぁ…、ら、ぞぉ……。」
息が三郎自身にかかる度、その体も震える。
三郎の足を掴んで大きく広げさせると、僕の体をその中心へかがめた。
「あ!?や、なに!?あ、アアア!んぁ!!ああ!!」
「三郎、すごいね。つぎつぎ溢れてる。」
「あ!やぁ、うそっあっ!!あぁあああ!!!」
また達した三郎を口内で受け止め、ぐい、と三郎の口内を開かせる。
「んっ!?ぅぇ、うぅ、ん!」
「嘘じゃないだろ?」
「うーーーー。」
自分の吐きだしたものを飲み込まされて、三郎は唸りながら僕を睨んだ。
「そんな顔するなら、ほら、こっちのも舐める?」
汚れた手を三郎の目の前にかざすと、慌ててその首を振る。
よほどおいしくなかったのか、その目には涙が浮かんでいた。
ぞくり、と僕の背筋に電流が走る。
「…じゃあ、こっちに食べてもらわないとね。」
「ふぇ?んっ、あ、あっ、らいぞ、なにっ?」
濡れた指を三郎の狭間に擦りつける暴かれたことの無い蕾は固く、指を当てても開く様子は無い。
だが僕の口に刻まれたのは笑みで。
ず、と音を立ててそこに指を突き入れた。
指を濡らす白濁が良い潤滑剤になっているようで、思ったほどの抵抗はない。
「やぁ、ら、いぞっ、何してっ!!」
「分からない?」
ぐるり、と埋めた指を動かすと「ひンっ」と三郎が啼く。
くちくちと音を立てるそこは、ナカで僕の指をきゅうきゅう締め付けてくる。
食いつくそこからずる、と指を引き抜き、今度は二本合わせて再び挿入させる。
「ぅあ!あっ、あぁんっ、んン、ら、め、らいぞ、うごかさな、でぇ…っ」
「ん、待って…このあたり、だと思うんだけど…………。」
「っぁああああン!!?あぁっ、ア、あァあ!ひぁっ、ゃ、な、あああ!!」
「あぁ、見つかったね。」
僕の指が三郎のナカで見つけたしこりを押すと、びゅくっ、と勢いよく三郎自身からまた欲が解き放たれた。
だがもちろんイったからってそれで終わらせるつもりは無い。
「ねぇ三郎、またいっちゃったね。」
「ふぅぅ、あっ、あぅ、ん…アッ!ああ…、」
「僕の指で、僕の口で、三郎はこんなに気持ち良くなるんだよ。」
「あ…ら、ぃぞ…?」
「そう。三郎はイヤラシイね。すごく。今日はもう何回イったかな?」
「あっあああ!や、やらぁ……。」
「ほら、まだ出るよ。」
「あ、あっ、あああああ!!らいぞぉもぉやめてぇええ!!」
びくびくと三郎の体が再び震える。
もう何度イったのか、三郎の体は汚れていないところがないくらいだ。
「っく、えっく…、もぉやだぁ…らいぞ、ゆりゅして……。」
「だぁめ。」
ずる、と埋められた指を引きぬく。
ひくんっ、と涙を零して三郎が震えるのに口づけを落として、僕は自分の袴と下帯を緩める。
もう三郎の痴態を見ていた僕のモノは痛いほどに張り詰めていた。
「あ………?」
「ねぇ三郎。三郎は僕のだよね?僕の、一番近くに居てくれるんだよね?」
下肢に感じた熱に視線を向ける三郎の顔を、手を添えて僕の方へ向ける。
涙目でぼんやりと僕を見上げた三郎は、それでも意味が通じたのかはっきりと頷いた。
「ら、いぞ……そばに、いてっ!」
「三郎……。大好き。」
「ひ、ぁ、ああああああああああ!!!!ら、いぞらいぞぉ!!」
三郎の腕が僕の背に回りしがみ付く。突き入れた僕自身も、三郎のナカに締め付けられて、全身三郎に抱きしめられているようだ。
「あ、あぁ……はっ、くるし………。」
「三郎、これで、三郎は僕のもの。」
「らいぞう?」
「分かる?僕が、君の中に入ってる。」
「え…あ、うそ、あンっ!あ、ぁあああ!!」
ぐちゅんっ、と音をさせて中を穿つと、三郎はしがみ付く手に力を入れてその波を堪えた。
その手を、僕は外して下肢へと導く。
「ほらね。」
「あ……あ………。」
三郎は信じられないといった顔で僕の顔を見上げるが、三郎の指先は今僕らの結合部へ触れている。
ぎっちりと埋まった僕自身に、三郎が目を見開いた。
「これ……?」
「僕だよ。ほら。」
「あ!!」
「…僕の、三郎だ。」
僕の下の体を、抱きしめる。
細い体は僕と違ってすぐに壊れてしまいそうで。でも僕は抱きしめる力を弱めることは出来ない。
僕にだけ笑って、僕の傍に居て、僕のものだけでいて。
なんて、汚い独占欲。
「ぃぞ…。」
「!!」
ふわり、と僕の体に温かい感触。
抱きしめる、三郎の腕。
「さぶろ、」
「わたし…らいぞのものになったんだな?これで、離れなくてもいいんだな?」
その目に浮かんだ涙は、痛みからだけではないのか。
「らいぞ…わたし、雷蔵が好きだ。好きでいて、よかった。」
「三郎…っ」
その瞬間。
ぷつり、と僕の理性の切れる音がやけに響いた。
「ああっ!あっ、ひンっ、やっ、あ、ああああん!!ぁあ、あっあああ!!」
びゅく、と腹に濡れた感触がする。また、三郎はイッてしまったらしい。
僕は嬌声を上げる三郎の顔から目を離さずに、ただ三郎の奥へ奥へと自身を穿つ。
ずるりと引き抜いては強く叩きつけることを繰り返し、その度に締め付けられる感触に息が上がった。
「あっひっ、あン!んぁ、あぅ、んっぁっ、あぁ!!や、らめ、またでちゃぁあ!」
「三郎っ、ちょっと待って。」
「いっ、あぁっ!!やぁああああ!!」
ぎゅう、と三郎自身を強く握って射精を止める。
「ぼくもっ、もうちょっとだから、ね、いっしょにイこう?」
「あ…、ンッ、ああぁああ!らいぞぉ!」
「はっ、あ…さぶろ………っ。」
「ふぁあ!!あっ、あああああああ!!!」
息を詰めて、三郎のナカへ欲を注ぐ。
注ぎ終わり、愛しさから抱きしめた体はくたり、と力が抜けてしまっていた。
「三郎?」
「はぁ……、はっ。」
気を失ってしまったようだ。
初めてなのに無理をさせ過ぎてしまったのかも知れない、と反省して、自身をずるりと引き抜く。
と、その時見た下肢では、三郎自身が小さく震えていた。
先ほど一緒にイったはずの、白濁は、透明な雫が零れるのみになっている。
「…はは。ほんとに空っぽになっちゃったね。」
聞こえてはいないだろうけど、それだけの強烈な快感を三郎に与えることが出来た。
「君はもう、僕から離れないだろう?」
本当はこんなことしなくても、離れないでいてくれたのかもしれないけど。
僕は今、とても満足気に微笑む自分を自覚していた。
これで君は、僕のもの。
あとがき
一万打フリリク後半「独占欲 三郎<<<雷蔵な雷鉢裏。」でした。
重ねて、とりのはね様大っ変お待たせいたしました!!
遅れてしまいました分エロに気合入れてみました。でもぬるかったらごめんなさい…。
前篇後編ともにとりのはね様のみのお持ち帰りとなります!!