うさうさ!!
「勘。」
「鉢屋。どうしたの?」
「ちょっと、面白い事つき合え。」
にやにやと、いつものように笑みを浮かべた三郎が勘右衛門を誘う。
「おもしろいこと?」
「うん。」
今、勘右衛門は図書室へ向かう途中で。
明日までの課題を終わらせなくてはいけない。
しかし。
「わかった。」
勘右衛門は笑って頷いた。
三郎がおもしろい事に誘って、つまらなかった試しはない。
それを逃すよりは後で兵助に拝み倒して課題を見せてもらうか、先生に怒られる方がましだ。
二人は三郎の部屋に移動し、そこで三郎が「ほら。」と先ほど伊作からもらった包みを取り出した。
「?なにそれ。」
「伊作先輩からもらったおもしろい薬。効果は一日だって。」
「……伊作先輩かぁ…。」
楽しげに笑う三郎とは逆に、勘右衛門の表情は微妙なものだ。
「…大丈夫?だまされてない?」
「もしだまされたら後で百倍にして返す。」
「まぁそりゃね。」
言いながら包みを開くと、小さな丸薬が一粒現れる。
「……………。」
「……………。」
二人は同時にお互いの目を見つめ、そして同時に息を吸う。
「「じゃんけんぽん!!」」
「よっしゃ!!」
「…ちっ。」
グーを出した勘右衛門と、チョキを出した三郎。
勘右衛門は嬉しそうに「ほらほら鉢屋。」と丸薬を指さした。
「…不味いかなぁ。」
「それはまぁ、伊作先輩の薬だし。」
「………いくぞ。」
「おう。」
意を決した三郎がそれを一飲みする。
「……………。」
「……………。」
「………・・ん?」
「鉢屋?」
「はっ、あ…」
「おい!?」
ふらり、と三郎の体が傾ぐのを勘右衛門が慌てて支えた。
はぁ、と三郎は荒い息を吐いて勘右衛門の体にもたれている。苦しそうなその背を撫でてやりながら勘右衛門はあの不運保健委員長どうしてくれようと考えていた。
その背がふと静かになる。
「…鉢屋?」
「ん…悪い勘。もう平気だ。」
「平気って……!!」
「勘?」
体を起こした三郎の頭を見て、勘右衛門が固まる。
頭巾をかぶっていない三郎の髪は今雷蔵に模した鬘が乗っており、そこに。
「うさみみ……。」
「はぁ!!?」
どこか笑みを浮かべながらつぶやく勘右衛門に三郎が素っ頓狂な声を上げて慌てて頭上を押さえる。
するとそこには確かにぴょこんと伸びた長い耳。
「なっ、なんだこれ!!」
泡を食いながら鏡を見ようと三郎が勘右衛門に背を向けた。
その尻に生えているものを見て、「ぶっ」とこらえきれない笑いがこぼれた。
形のいい三郎の尻に、白い小さな尻尾が生えている。
「か、かわいい…。」
「は?…あ!!な、なんだよこれ!!」
「鉢屋かっわいいーー!!」
「うわっ、ちょ、勘!!」
顔を赤くして、心なしか目まで潤ませて自分の姿を見下ろす三郎に勘右衛門は思わず飛びかかる。そのまま間近で生えた兎耳を見、好奇心の赴くままにぱくりと咥えた。
「ひゃん!!」
「あ。感覚あるんだ。うわぁ面白い…。伊作先輩面白いもん作ったなぁ…。」
「ちょ、勘、やめ、」
「尻尾は?」
「きゃうン!!」
「ははは、可愛い声。」
「勘!!いい加減にっ」
「やだよ。鉢屋かわいいもん。もっと遊ぼうよ。」
にっこりとそれは楽しそうな顔で勘右衛門が三郎に笑いかける。
ヒクリと顔を引きつらせた三郎は、その瞬間に保健委員長への百倍返しを心に誓ったのだった。
あとがき
うさ耳!!!うさ尻尾!!!テンション上がる!!!特に尻尾!!!もふもふしたい!!!
かわいいよ三郎かわいいよハァハァ