[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。
ツンデレ彼女
※三郎が女の子になってます!!苦手な方はここかブラウザバックおねがいします!!
男三人で雑談しているところに、携帯のバイブが鳴りだした。
内容を確認すると、彼女からのメール。
「兵助?どした?」
「すぐに来いって。」
「部活?」
「いや。彼女。じゃ俺行くわ。」
さっさと鞄を手に取り背を向ける兵助を、残った男二人が見送る。
「…そんなすぐ言うこと聞くなんて珍しい。彼女そんなに可愛いの?」
「あー…。」
一人はその言葉にしばらく視線を宙に彷徨わせると、思いついたようにポン、と掌を拳で叩いた。
「ツンデレだよ。」
「三郎。」
「遅い!」
「ごめん。」
熱い中木陰を探して待つ三郎に兵助が駆け寄る。
短めのスカートや半そでの制服から出た腕は細く頼りない。「平気か?」と聞く前にその腕を手に取った。
「…なに?」
「手。冷たいぞ。熱中症になる。」
そして手を引いて自販機の前に行き、スポーツドリンクを購入して手渡す。
三郎は一瞬きょとんとした顔になって、慌てて怒った顔を「作る」とプルトップを勢いよく開けた。
「…兵助が早く来ないのがいけないんだからね!」
「うん。ごめん。」
そしてごくごくと勢いよくそれを飲んで、「プハッ」と口を離したあとその缶を兵助に押し付ける。
「まだ中身残ってるぞ。」
「もう飲めない。」
半分ほど残った中身から三郎がそっぽを向く。
正直、熱い中走ってきて喉が渇いていたので遠慮なくそれを貰うことにした。
まだ冷たいそれを一気に飲み干し、三郎が兵助をじっと見上げて待っていることに気づく。
「行くか。」
「もちろん。」
兵助は三郎の細い手をとり、暑い日差しの中を歩きだした。
二人で歩く最中、ちらり、と兵助は並んで歩く三郎の横顔を覗き見る。
ふわりふわりと長い髪が揺れる。少しパーマの掛かった髪は暑くないのかと思い、その顔色を見れば、そんな風には見えない。
むしろ、彼女の纏う空気は涼し気だ。
以前そんなことを言ったら、嫌そうな顔で「お前に言われたくない。」と言われた。
だが剣道部なんて汗臭い部活をしているのだから、涼しそうとはかけ離れているだろうに。
そんな一幕を思い出していると、急に手を引っ張られた。
「どこ行くの兵助。こっち。」
「そっち?」
兵助の向かっていた道筋は三郎の家へ向かうものだ。三郎の言うとおりに右に曲ればまったく別の道になってしまう。
首を傾げながらも、しかし彼女の地元であるのだから、と逆らわずにそのまま手を引かれる。
「こっちの方が近道なの。」
「なんの?」
目的地を聞いていない兵助は当然疑問に思い尋ねたが、帰ってきたのは鋭い睨みだけだった。
またすぐ前を向いて歩きだした三郎に手を引かれ、兵助は小さくため息を吐く。
どうやら目的地は知らされないらしい。
彼女の兄の雷蔵ならば、三郎の考えていることが分かるのだろうか。
兵助は自身の手を引いて目の前を歩く小さな背中を見て、それから自分の口元に手をやった。
触って確かめれば、思った通り笑みが浮かんでいるのが分かって自分で呆れる。
(普通は、可愛いと思わないんだろうな。)
素直じゃないだけで、彼女が悪意から兵助に何かをさせようという訳ではないことは分かっている。ならば、何も言わないのは恥ずかしいからなんだろう。
その証拠に、フワフワ揺れる髪の隙間から見える耳が真っ赤になっている。
そのまま口を開かず歩き続けたが、気まずくはなかった。
至って和やかな空気でついた先は。
「スーパー?」
「はいこれ持って。」
「あ。はい。」
手を繋いだままカゴを手渡される。三郎は勝手知ったる様子で涼しい店内へ足を踏み込んだ。
兵助はといえば、初めて入る店内に視線を彷徨わせながら手を引かれるままに三郎についていくだけだ。
入口のすぐ近くの野菜売り場で、三郎の足がぴたりと止まった。そしてその目の前には立派な大根が並んでいる。
三郎は数個を見比べ一つを兵助の持つカゴへ放りこむ。途端、ずしりと兵助の手に重力がかかった。
そして次にニンジン、キャベツ、セロリが加えられ、すでに大分重いカゴを持ちながら次は缶詰の置き場へ。
三郎はひょいひょいと気軽にコーンやホイールトマト、マッシュルームなどの缶詰を入れて行くが、兵助の手には大分力が入っている。
本来ならば聞き腕の右手で持ちたいのだが、そちらは今三郎の手と繋がっていた。
(…俺、なんかしたっけ?)
もうそろそろ重さで指先が痺れてきたな、と思い始めて、ようやく三郎がレジへと向かった。
「買い物終わり?」
その背中に問いかければ、さっきまで真っ赤だった顔はどこへやら、悪戯っぽい笑みを浮かべ三郎が振り向く。
「…もっと持てるって?」
「いやべつにそういうわけじゃ!」
「遠慮するな。まだ持てるならまあメニューを追加してもいい。」
「いや。あの俺の手も結構げんか…。」
「よしいくぞー。」ご機嫌に繋いだ手を揺らしながらUターンするのを、兵助は涙を飲んでついていくのだった。
…逆らうという選択肢は最初から存在しない。
しかし精肉売り場を経由し、卵売り場に入ったとき。兵助の目が文字通り輝いた。
大体予想がつくが、一応三郎がその視線を追えば、案の定そこには豆腐が並べられている。
「………別にお前の夕飯買う訳じゃないんだぞ?」
「え?三郎豆腐食べないの?」
「豆腐は食べるけど今日のメニューの予定にはない。」
「豆腐食べようよ豆腐。」
「だから。」
「豆腐。」
豆腐のこととなると途端にしつこくなる兵助を、三郎はじっと呆れた視線で見上げるが、兵助は「ん?」と首を傾げるだけで特に何を思う訳でもないらしい。
三郎はため息を吐いて、並んでいる中から木綿豆腐を一つカゴへ放りこんだ。
途端に機嫌のよくなった兵助の顔を見て、三郎は今度こそ背を向けてレジへ向かう。
その顔に、照れたような笑みが浮かばれているのを兵助は見逃さなかった。
二人で浮き立つ気持ちでレジに並び、そして当然兵助が再び荷物を持つ。
しかし今度は三郎の手にもビニール袋が握られていた。
今来た道を戻れば、三郎の家はすぐ近くで。
兵助は家の前で立ち止まり、荷物を三郎へ手渡した。
「荷物持ちならそう言ってくれればいいのに。」
「そしたら来ないでしょ兵助。」
「来るよ。」
さらりと、なんの気負いも無い声に三郎は思わず顔を上げた。
見上げた先の兵助は呆れた顔で三郎を見下ろしていて。
「こんな重いもの持つなら俺を呼べよ。遠慮なんかしないで。」
「え、遠慮っていうか……。」
「ん?」
「ああもう!!良いから来い!!」
「うぉ!?」
再び三郎が兵助の手を取って家に入ると、すでに雷蔵の靴が置いてあった。
「雷蔵!らーいーぞー!!」
「はいはい。お帰り三郎。なに?」
玄関で雷蔵を呼ぶ三郎を階段を下りてきた雷蔵が笑顔で出迎える。
そして三郎に手を握られている兵助にひやりとした視線をおくりながら、三郎に問いかけた。
「兵助捕まえてて!」
「…喜んで。」
「え、ちょ、さ…。」
「さあ兵助。僕の部屋に行こうか?」
「あ!駄目!雷蔵の部屋汚いだろ!居間に居て!」
「はいはい。」
三郎が兵助の手を離すと同時、雷蔵ががっちりと腕を掴んで兵助を家へ上がらせた。ギリギリと音を立てて掴まれるその部分に顔を顰めないよう必死にポーカーフェイスを保つが、滲んだ脂汗は隠しようがない。
三郎はそれに気づいているのかいないのか…。なんとか雷蔵と二人きりになるような事態は免れたらしい。
「…命拾いしたね。」
ぼそりと囁かれた言葉が恐ろしい。
「ら、雷蔵…腕を離してくれないか?逃げないから。」
「駄目だよ。君も聞いていただろう?僕は兵助を捕まえるように三郎にお願いされてるんだから。」
にっこりと、学園でも菩薩の笑顔と名高い顔で言われるが、兵助は知っていた。
これは地獄の閻魔の顔だ。
「ははは…。」
「ふふふ…。」
そうして二人が玄関で静かな笑みを浮かべている間に三郎はさっさと荷物を持って部屋に入ってしまった。
二人が居間に入ると、そこから見える台所で、三郎がちょこちょこと動いていた。
薄いピンクのエプロンを付けた姿は、兵助にとっても雷蔵にとっても至福の光景である。
どれだけぼんやりとその光景を見ていただろうか。
料理がひと段落ついたらしく、三郎がこっちを向いて「…なんで二人ともそんなところで突っ立ってるの?」と小首を傾げる。
「三郎がかわいいから見惚れてたんだよ。」
「雷蔵ってば。馬鹿言わないで。あ、兵助。もう逃げる気ないなら手伝って。」
「わかった。」
「三郎。僕も手伝おうか?」
「嬉しいけど、駄目。雷蔵すぐに壊しちゃうでしょ?」
そうだね。と残念そうに口にしながらも視線は兵助に「妙な真似するなよ。」と鋭く突き刺さっている。
ようやく手を離され、兵助は安堵のため息を吐きながら三郎の下へ向かった。
…掴まれていた腕が赤いどころか黄色く変色している。これは明日には呪われたように紫に変わっているに違いない。
「兵助?どうしたの?」
「いや…。俺はなにすればいい?」
兵助が見る限り料理はあらかた終わっているようで。三郎はその言葉に視線を彷徨わせるとはっと思いついたように兵助へレタスを手渡した。
「あー。えーっと…。野菜!ちぎってて!!サラダ用の!」
「分かった。」
頷いてレタスを洗い出した兵助をちらちらと見ながら、三郎は鍋の中身をかき混ぜている。
その顔が赤いことに、同じく三郎をちらちら見ていた兵助が気付いた。
「三郎?顔赤いぞ?」
「あ、熱いの!鍋の傍は!!」
「そ、そうか?」
突然大きな声を出されて目を瞬かせた兵助は、またしばらくレタスを毟っていた後、「あ。」と呟いた。
「なに?」
「いや。二人で手を繋いで買い物行ってそれから二人で料理って…。」
「それ以上言うなよ!!」
「…ああそれで。」
「言うなってばぁ!!!」
「三郎。さっきから大声出してどうしたの?なにかされた?」
「なんでもない!!」
台所へ背を向けてソファに座る雷蔵に、三郎が叫ぶように応える。
「兵助!サラダはもう大丈夫からあっち行ってて!!」
「ん?いいのか?」
「良いの!ほら!雷蔵のとこ一緒にいて!」
ぐいぐいと背を押されてまで台所から出されたのでは兵助にはどうしようもない。
おそるおそる雷蔵の座るソファの近くへ進めば目にもとまらぬ速さで隣へ座らされた。
…その際引っ張られた腕が脱臼しそうだ。
「なに?三郎になにかした?」
「三十センチ以上近づいてませんオニイサン。」
「兵助にお兄さんって言われると気味悪いなぁ。」
アハッと笑われて兵助は目を逸らしながら(三郎!!早く!!)と願うしかなかった。
「お待たせ!ご飯出来たよ!!」
「あ。おいしそうだね。」
ニコニコと皿の並べられた食卓に雷蔵が座る横で、兵助は目を見開いていた。
「…なんだよ。兵助。食べないの?」
「…三郎っ。愛してる!!」
「ふぇ!!!!?」
唇を尖らせ拗ねた口調で兵助を見上げた三郎は、突然の告白に一瞬で顔を赤く染め上げた。
「おい豆腐馬鹿。食卓に豆腐が出たくらいで告白するな。三郎が本気にする。」
「本気にしていい!」
「黙れ。」
顔をゆで上げた三郎を抱えながら、雷蔵は普段の顔をかなぐり捨てて兵助を睨む。
さっきも三郎に睨まれたが雰囲気は大違いだな、などと呑気なことを考えながら兵助もその視線を受ける。
険呑な雰囲気に三郎ははっと正気に戻り、慌てて二人を押し離した。
「ふ、二人とも!ご飯冷めるから!」
「…そうだね。食べようか。」
「うん。ありがとう三郎。俺の分まで。」
ちなみに今日のメニュー。
野菜たっぷりのミネストローネにパン。それに豆腐サラダと大皿に魚のフリットがこんもりと乗っていた。
あくまで兵助と雷蔵は視線を合わせないまま和やか(?)に食事は進んだのだった。
「ところでさ、三郎。」
玄関まで三郎が兵助を送った先、唐突に兵助が口を開いた。
「今日出た豆腐が、買ったやつじゃなかったのは偶然?」
あまりにさらりとした軽い口調で、とっさに三郎は「そうだ。」とは言えなかった。
「あー…。えっと。」
「さっきちらっと見た時に、豆腐のパックがたくさん見えた。」
「あ…うー。」
気まずそうに視線を彷徨わせる三郎の手が、突然握られる。
「え?」
「ひょっとして三郎……。」
「う………。」
三郎の手を握ったまま、兵助の男にしては大きな目が三郎の顔をじっと見つめる。
「豆腐の素晴らしさに目覚めた?」
「違う!!」
あまりのアホ発言に思わず即答で否定する。
三郎は(しまったそういうことにしておけばよかった)とすぐに後悔しだしたが、兵助は当然「そうなのか?」と首を傾げていた。
「じゃあなんで?」
「それはその………。」
「なんで?」
「…………………………つい。」
「え?」
「つい買っちゃうんだよ!!お前が普段豆腐豆腐言うから!!」
やけくそ気味に叫べば、兵助がきょとんと眼を瞬かせている。
「俺?」
「お、お前がいっつも豆腐豆腐言うから…つい見る度に………。」
「俺?」
「だ、だから今日は買わないでいようと思ったのに………。お前やっぱり豆腐豆腐煩いし……。」
「じゃあいっつも荷物持ちに呼ばないのって………?」
「買い物する度に豆腐買ってたら絶対お前調子に乗るだろ!!!」
恥ずかしさで真っ赤になっている三郎を、兵助は呆然と見下ろしていた。
「……………三郎。俺、今のでもすごい調子乗りそう…。」
「だ、だから…?」
「抱きしめていい?」
「ばっ…うわ!!」
罵倒しようする声を封じるように細い体を思い切り抱きしめる。
女の子特有の柔らかい感触に目眩を覚えながら、兵助はその耳元にそっと口を寄せた。
「…ありがとう三郎。すっごい嬉しい。」
「う………。
三郎も、兵助の鍛えている固い体と抱きしめてくる力強い腕に目眩を感じて何も言えなくなっている。
大人しく腕の中に治まっている三郎にどうしようもなく愛しさを感じながら、兵助は名残惜し気にその体を解放した。
「…また食べに来ていい?荷物持ちもするし、俺も手伝うから。」
そっと顔にかかった髪を避けてやりながら兵助が問う。
三郎は俯き、視線を合わせないまま、「……お前が来ないと豆腐が悪くなる。」とぶっきらぼうに応える。
暗くて見えないが、真っ赤になっているだろう顔を想像して兵助が優しく微笑む。
「じゃあ俺がそれを食べにくるよ。」
「そうしろ。」
「うん。」
嬉しそうに頷く兵助に、三郎は今日初めて、優しい笑顔で微笑んだ。
「…次は雷蔵が居ないときに呼んでやるよ。」
「えっ!?」
「じゃあな!!」
あっという間に家の中に戻った三郎を呆然と見送って、兵助はしばしその場で動けずにいた。
そしてはっと正気に戻ると携帯を取り出しカチカチと逃げて行った彼女へメールを打ちこんで、その場を離れる。
『じゃあその時に新婚さんごっこしよう。』
「っの馬鹿!!!」
三郎がまた顔を赤くして家を飛び出したときにはもうすでに兵助の姿は無く。
兵助が再び三郎の家に呼ばれるのは相当後のことになるのだった。
あとがき
三郎女体化は久々鉢が一番しっくりくる気がする。なんとなく。
でもツンデレwwツンデレ具合頑張りました!まだ甘いですかね?
結局女の子でも兵助大好きなのには変わりない三郎(笑)
そして絶対シスコンな兄雷蔵が大好きです!