繋いだ手
※少しオリキャラあり








「優勝者鉢屋三郎!!以上をもって今日の実習は終了とする!」

「ありがとうございました!!」
終了を告げた教師に一礼し、五年いろはそれぞれの組が散って行く。
井戸に向かう者、部屋に帰る者、風呂に行く者などに分かれて行く中で、三郎は井戸に向かっていた。
乾いた喉を潤そうとしていたのだが、あいにく混雑していてすぐにはありつけそうもない。
残念なため息を吐く三郎の肩を、誰かが叩いた。
振り向くとそこにはあまり見ない顔がある。
「……………?えっと、武山だったか。」
「さすが変装名人。隣の組まで覚えてるとはな。」
「…私に何か用か?」
「ああ鉢屋も井戸待ちだろう?ほら。」
軽い言葉と共に水筒を差し出された。
武山は体格の良いい組の生徒だ。三郎や兵助程ではないが成績も優秀で大体上位に入っている。しかしいつも武山の上にいる三郎は目の上の瘤なはずだ。親切される理由が見当たらない。
受け取らずにただ自分より大きな武山を見つめた。
警戒している猫のようなその目に武山はからりと笑う。
「なんだよ。ただの親切だって。俺はいま喉乾いてないからさ。このまま水捨てるよりはいいだろう?」
いつの間にか、井戸の周りには生徒がいなくなっていた。三郎がその親切を受け取らなくても、欲求を満たすことはできる。
しかし。
「ありがとう…。」
三郎は水筒を受け取るとそれに口を付けた。薄荷を少し入れているのか、爽やかな口当たりが三郎の喉を通りすぎる。
三郎は喉の潤いに満足して水筒を武山に返し、微笑んだ。
「ありがとう。美味かったよ。」
「……………それはよかった。」
武山はなぜかじっと三郎を見つめ動かない。
「…………?」
なにか失礼なことをしただろうか?と三郎は首を傾げる。極端に交友関係の少ない三郎はこうした時どうしたらいいのか分からない。
「た「あ!いた!三郎――!!」
なにかしたかと問おうとした時、聞きなれた大好きな声がそれを遮った。
「雷蔵?」
「捜したよ!こんなところにいたの?」
「喉が渇いて…。」
「うん?もう井戸は空いたけど?」
「武山が水を分けてくれたんだ。」
「武山?」
そこでようやく雷蔵は三郎の傍らにいた武山に視線を移した。それまではまるで視界に入っていないかのようにふるまっていた目は、少し険悪な雰囲気を出している。
「………この子になにか用?」
「別に。水を分けてただけさ。」
「……………本当に?」
「雷蔵。本当だよ。」
警戒する雷蔵の腕を三郎が引いて訴えると、雷蔵はいつもの甘い笑顔に代わり三郎を振り向いた。
「そう。三郎がそう言うなら。」
「……相変わらずお熱いこって。」
「羨ましい?」
「別に。」
武山は短くそう言い、二人に背を向けた。
雷蔵と三郎はそれを見送って、いつものように二人で並んで歩きだした。


変化は、就寝前に訪れた。
(からだ……あつい………。)
三郎は体の火照りを感じ、夜着を肌蹴させた。流れる布がくすぐったい。
肌に布が触れる感触に、いつもは感じないゾクリとした感覚を覚える。
「ふ……あ?」
「三郎?」
熱に浮かされたような声に雷蔵が振り向く。
そこに居た三郎は夜着を肌蹴させ肌を紅潮させ、目を濡らして雷蔵を見つめていた。
「さ…ぶろう?」
「ら…いぞ……、あ、つ……。」
「熱い?風邪?」
三郎の言葉に慌てて近寄り額に手を当てる。しかしその途端、「ひぁん!?」と濡れた声が上がった。
いつもならこの程度で上がる声ではない。
雷蔵は表情を真剣なものにして三郎を見つめた。
小刻みに震える体。正気を失いつつある目。震える体から流れた夜着が体に触れる度に小さく濡れた声が上がる。体全体が敏感になっているようだ。
「あいつ………っ。」
原因はたやすく思い当たった。
雷蔵が見つけた時、武山はじっと三郎を見つめていた。本当は即効性のある薬に違いない。
だが、三郎は薬の効きにくい体質だ。だからこそ、今苦しんでいるのだろう。
本来なら、正気を失うどころの効き目ではないに違いない。下手をしたら廃人になるほどのもの。三郎だから、これで済んでいるのだ。
それでも。
「あ…っ、あぁ…!」
そこまで強力な薬は三郎でも効果を消しきることはできない。
雷蔵はそっと三郎の乱れた髪を撫でた。
「あ!?ひぁあああ!?」
「三郎……。」
この子は喜んでいたのに。雷蔵たち以外にあまり友人の居ない三郎は、珍しく同級生から親切を受けたと、喜んでいたのに。
腹の内が煮えたぎる。実習の恨みかなにか知らないが、今すぐにい組の長屋へ行き武山を殴り潰したい。
だが、今は三郎の傍に居なければ。
自分の体の変化が不安なのだろう。三郎の手は雷蔵の夜着を掴んで離さない。
「三郎。」
「ら、いぞ…っ、らいぞぉ!!」
目を覆っていた水の膜が堪え切れずポロポロと流れ出した。はぁ、と熱い息も止むことが無く、不安がる子供のように無防備に、雷蔵にしがみついている。
「らいぞ…くるし………。」
「三郎。」
「あ…からだ…んンっ、へん、なんだ……。あっ…は、ほし……らいぞ…たすけ、てぇ」
助けを求める三郎の声に目を細めて、再び頭を優しく撫でる。三郎はそれからすらも快楽を拾い、体を震わせた。
「三郎…助けてあげる。」
「あ!ぁ、あ!ら、いぞ!あぁン!!んぅ!」
雷蔵は荒い息を吐く唇を塞ぎながら、すでに腰にまとわりつくように肌蹴ている夜着を片手で脱がせる。伸ばした舌はあっさり三郎に絡め取られ、吸われる。そのままに口内を擽れば三郎の体がビクリと一際大きく震えた。
「は、ぁ。」
「あ……あ…、やぁ、らいぞ………、もっと…。」
「三郎…。」
下を見ると雷蔵と三郎の腹は白い物で汚れている。口づけだけで達しながらも三郎はもっと、と雷蔵の腕を掴んだ。
請われるままに雷蔵は再び三郎に口づける。目を閉じずにじっと見つめた先で、三郎は快楽にうっとりと身を委ねているように見えた。
三郎の頭に回していた手を、胸の飾りへ滑らせる。
小さな突起に指が引っかかった途端、また三郎の体が震えた。しかし今度はそれに構うことなく反対側の手を下肢へ向けた。
「んぃ!!は、ヒっ!ふぁ、あ、あああああ!!」
ぬるりと白濁を纏ったそれを握れば、三郎は目を見開き背を仰け反らせて啼き声を上げた。
少し握っただけでまた飛ばした白濁はすでに粘り気が少ない気がする。
快楽で鈍った頭でも、今の状態がおかしいのは分かるのだろう。三郎は雷蔵の夜着を掴んだまま離さずにただひたすらに雷蔵の名前を呼び続けている。
「三郎…三郎。大丈夫。」
「うっ…ひぅ、ん…ら、いぞ……。」
「気持ち良いことしかしないよ。すぐに終わる。だから、僕に任せて。ね?」
ぽろぽろと涙を零す三郎の顔を、下から覗きこむように見つめる。嗚咽を漏らしならがらもその雷蔵の目をしっかりと見た三郎は、小さく頷いた。
それを見てとって雷蔵の夜着を掴んでいた手を背中に回させる。先ほどより密着した体に温もりを求めるように頭を擦り付ける三郎の頭をそっと支えるながら、雷蔵は三郎の体を布団に横たえた。
「三郎……三郎。愛してる。」
「ん、あ…は、ぁ…。あああああ!」
ぐちり、と濡れた音をさせて三郎自身を扱く。焦点の合わない目で背を仰け反らせながら雷蔵の背に必死にしがみつく三郎を、雷蔵は焼き切れそうな理性と共に見下ろしていた。
「ひ、ぃ、ああっ、ああああ!やぁぁあああ!」
出しても出しても萎えることの無いそれを扱き続ける雷蔵の手に、三郎の手が添えられる。
「…三郎?」
「はぁあ!あっ、アぁ!や、らいぞ…やぁ!!」
「…でも、このままじゃ三郎が辛いだろう?」
「やっ、ちが…ちが、あああ!らいぞぉ!!」
「違う?」
「なか、ほしいよぉ!!!奥、からだ、おく変だからぁああ!」
「!!」
そう泣き喘ぎながら三郎は力の入らない手で添えた雷蔵の手を握り、もっと下へと押し付けた。その指が先走りや白濁で濡れた秘所へ触れた瞬間、再び三郎が「ひぁん!!」と目を見開く。
その声にはっと正気に戻った雷蔵は身をかがめて三郎へ口づけを落とす。そして、慣らさずとも随分柔らかくなっているそこへズッっと指を沈めた。
「あああああ!!」
「三郎…ナカ熱い。気持ちいい?」
「いい!!いいか、らぁ…雷蔵もっと、もっとほし、ふぁあああん!アッ!んァあああっ!」
ヒクリ、と震える蕾に今度は二本、三本と指を増やして思い切り掻き混ぜる。
大きく足を広げた三郎はその快楽を拾おうとしているのか逃げようとしているのか、体を捩ってまた雷蔵へしがみ付く。
それに目を細めて、雷蔵はぐちゅんっとその指で三郎の中を抉った。
「アアアあああああ!!やぁらいぞ…、らいぞっ、それ、きもちいいよぉ!!ああああン!!あ、ああ!」
「そう…ならもっとしてあげる。」
「ん、やああああ!!!はぁっ、あぁっ、あああああ!!」
ぐちゅぐちゅぐちりと濡れた音が部屋に響く。その音にも反応する三郎の体はいまだ弾け続ける白濁で汚れていない処は見当たらない。
薬で敏感になった肌は体の下にある布団が擦れるだけでも快楽を呼び起こし、ともすれば意識が落ちそうになっているに違いない。
でも、三郎はまだ意識を保ったままでいる。
意識を保ったまま、ただひたすら雷蔵を求めている。
この状態が良いとは、雷蔵には思えない。
早く気を落としてしまえば楽になれるのに、三郎がそれを望まないのは。
こんな姿態を見せられながら雷蔵が自身の快楽を追わないのは。
これが、そんなことを目的とされたことではないからだ。
これが、悪意からくる物である限り、雷蔵はそれを利用しない。
三郎も、それに気づいているからただひたすら雷蔵の名を呼ぶ。
ごめん。
と。謝る変わりに名を呼びながら涙を流し意識を保っている。
「ふっ、う、ぅうンッ!ら、いぞ…あ…あああ…、や、ぁ、あ…うそ…、んっああ!」
「三郎?」
「あ…、」
三郎の様子が少し変わったことにすばやく気が付き、雷蔵がその手を止める。
三郎は不安そうに、悲しそうに雷蔵を見上げた。顔を紅潮させて、目を泳がせる三郎に「どうしたの?」と優しく問いかける。
「らい、ぞぉ…、」
「うん?」
そっと三郎の頬を撫でる。怖がることのないように、不安が消えるように。
その暖かい手に、また三郎は目から涙をこぼしてその目を腕で覆った。
「…たり、ない、んだ。」
「三郎…。」
「ゆびじゃ、とどかない。もっと、奥が…うずいて……、ごめ、らいぞ…。ごめん……。」
「三郎。」
名を呼ぶ雷蔵の声に、三郎の肩がビクリと震える。
雷蔵はくちゅ、んと三郎の中から指を引きぬき、三郎の顔を覆う腕に口づけた。
「三郎。君が謝ることは何もない。君は、ただ快楽を追って。僕を、感じてくれれば、それでいい。」
「…らいぞ」
「愛してるよ。三郎。」
「らいぞぉ!!あっ、あああ!」
「んっ、」
「あああああああ!!!ひぁあああ!アんっああぁ!!あ!すご、あ、やぁ、あああああ!」
勢いよく中を抉る雷蔵からもっと快楽を得ようと三郎は雷蔵の腰に足を絡め自身も腰を揺すりだした。
顔を覆っていた腕を再び雷蔵の首に回すと、雷蔵がふと微笑んだのが分かった。
「あ!?あ、らい、ぞぉ?あああん!ひぃあう!ん、はぁ、あ!ああん!!」
「三郎、三郎…。君を抱いているのは僕だ。感じさせているのも僕だ。薬じゃない。だから、気持ちよくなっていいんだよ。…だから…そんなに、泣かなくていい。」
三郎の目が見開かれる。
嘘なのに。三郎がこんなに快楽のみを追ってしまって雷蔵を振り回してしまっているのは、決して雷蔵のせいではないことを三郎は理解しているのに。
雷蔵は、三郎が快楽を受け入れられるようにそんな優しい嘘を吐くのだ。
「あ!ああああ!らいぞぉ!!」
「は、ぁ、さぶろ…、」
「ああ!はあああンっ、あっ!ンぁあ、ああああああああ!!」
雷蔵の背にしがみ付き、そこに爪跡を残したあと、三郎の頭がカクンと下がる。
気を、失ったようだ。
雷蔵も三郎と同時に自身を解放していたため、躊躇いなくそれを引きぬいた。
「三郎…?」
ぐったりと体を弛緩させた三郎からは返事がない。しかし、呼吸は穏やかだ。眠ってしまったらしい。
雷蔵はそのことにほっと息を吐くと、手ぬぐいを取って三郎の体を清め始めた。
井戸から水を汲みなんの痕跡も無いほどに綺麗にし、三郎を雷蔵の布団まで移動させる。
三郎の布団は明日早々洗濯をすることになりそうだ。
穏やかな顔で眠る三郎を見つめながらそんなことを考えると同時。
雷蔵はどう奴を料理するか考えていた。
(孤立させて、絶望させて、死にたくなるほどに苦痛を与えてから同じ薬を与えてやろう。)
奴にはこうして助けてくれる友もいないだろう。
最後に自我を崩壊させてやるだけ親切というものだ。
「ん……ら、いぞ……。」
「ここにいるよ。」
身じろぎする三郎の手を握ってやると、その手に頬ずりする彼が愛しい。
(絶対に逃がさない。)
菩薩のような笑みで三郎を見下ろしながら、雷蔵はどれだけでも残酷になれる。
(それを、証明してあげるよ。)
人が、鬼になる瞬間をみせてやろう。
繋いだ手はどこまでも温かく、その温かさに雷蔵は決意を固めた。


さあ朝が待ち遠しい。


あとがき
10000hitフリリク。裏でお題は「媚薬」「三郎は薬が効きにくい体質」「実習」 でした。
前二つはともかく最後の一つが…っ、少ししか出なかったのが残念…。
そして黒雷蔵オチ。書いてる私は楽しかったですすみませんorz
匿名の方からのリクでしたのでフリーにします。よろしければお持ち帰りくださいませ。

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