ちんまいの

※現パロで三郎がちっちゃく(5歳くらい)になってます!苦手な方はバックプリーズ!!




「あれ?」

「お?」
「んん?」
「「「雷蔵は?」」」
竹谷と勘右衛門、それに兵助は、待ち合わせ場所についた途端に顔を見合わせていた。
今日は四人で遊びに行く約束をしていたのに。いつもならだれより早く来る雷蔵の姿が何処にも見えない。
「なんだ?忘れてんのか?」
「どっかで道に迷って分かれ道でさらに迷ってそうだよね。」
「メールしてみるか。」
と、兵助が携帯を取り出した拍子にそれが「とーふとーふっ♪」と鳴りだした。
「あ。雷蔵からメールだ。」
「その前にお前その着メロどっから持ってきた!?」
「自作!?自作なの!?そんなボカロまで使って本気で!?」
「そんなことより、お前らにも届いてるだろ?」
竹谷たちにとってはそんなことではないのだが、言われた通り、ポケットに入れていた二人の携帯もバイブ音を響かせていた。
「『連絡遅くなってごめん。今日行けなくなっちゃったから、三人で楽しんで来て(^^)ノシ』って…。」
「理由も言わないなんて珍しいね?どうしたんだろ?」
「なんかあったのか…?」
しかしメールの様子はご機嫌で元気そうではある。
「…………じゃ。行き先は雷蔵の家に変更ってことで。」
「おう。」
「それがいい。」


「…なんで君たちがここにいるのさ。」
「雷蔵。一人でなんか楽しそうなことしてるだろ?」
「長年の友人を舐めるなよ?」
「おじゃまします。」
「待て。お邪魔するな。」
玄関の戸を開けて竹谷たちを迎え入れた(?)のは不機嫌な雷蔵の顔で。しかし長年の友人である竹谷たちはそれにひるむことなくその家の中へと足を踏み入れた。
だがそのとき。
雷蔵と対峙していた三人の動きがぴたりと止まった。
「らいぞぉ。なにしてるの?」
「ああ三郎!!ごめんね一人にして!今行くよ。」
トテトテと軽い足音。それに見合った小さな体で、それは竹谷たちの視線をくぎ付けにした。
フワフワの茶色い髪。くりんとまんまるの大きな目。今は拗ねたように尖らせて唇が、なんとも幼くて可愛らしい。
雷蔵は竹谷たちには構っていられないとばかりにその小さな体を大切そうに抱き上げる。
「もう!雷蔵ってばどっかいっちゃって、探したよ?」
「うん。ごめん。お客さんが来ててね。」
「おきゃくさん?」
くりん、とその小さな頭が竹谷たちの方へ向けられ、再びその幼い顔が三人の目に入ることになる。
「雷蔵のミニチュア……。」
「そっくりでしょ。僕の従兄で三郎っていうの。三郎。このお兄ちゃんたちにご挨拶しなさい。」
「うんっ。はちやさぶろうです!」
雷蔵に下ろしてもらい、小さな頭をそれでも重そうにぺこりと下げる。
「おにいさんたちもあそんでくれるの?」
上げられたその目があまりにもキラキラ輝いていた。そんな子供に否定の言葉など言えるはずも無く、三郎の背後にいる雷蔵のプレッシャーもある。
「もちろん!」
三人は遠慮なく雷蔵の家に上がったのであった。


「三郎の両親は忙しい人でね。まだ小さい三郎を一人残せないからって、よくうちに預けて行くんだ。」
「ふーん。」
「一際僕に懐いてくれるものだから僕も三郎が可愛くてしょうがなくてね。」
「うんうん。」
「だから…、」
穏やかに微笑んでいた雷蔵の背後が、一気に黒いオーラに覆われる。
「僕の三郎に手を出すなよ?…もし、出したら君たち裸にひんむいてファンの子たちの前に引き摺り出す。」
「怖っ!!」
ハイエナの如く群がる女子に三人の顔が青ざめる。それを見て、雷蔵は二コリと菩薩の笑顔で微笑み「ね?」と同意を求めた。
声も無く頷く三人組に笑みを深めて、雷蔵は膝の上で懸命にドーナツを頬張っている三郎を覗きこむ。
「ああ三郎、ついてるよ?ほら。」
「んっ。」
ぺろり、と三郎の口の端を舐めると、三郎がくすぐったそうにしながらも「雷蔵ありがとう!!」と笑ってまたドーナツを食べ始める。
その様子に雷蔵はもう蕩けそうな顔をして三郎を抱きしめていた。
「……………え。雷蔵ってこういうキャラだっけ?」
竹谷が唖然と呟く。
彼が知っている雷蔵は、人当たりがよく優柔不断ではあるが穏やかな性格、を思わせてその実結構腹黒で彼に泣かされた男子は数知れない。という男で在るはずなのだが。
雷蔵の三郎への愛情は普段の彼をもかなぐり捨てさせるものなのか。
「よっぽどかわいいんだな。」
「もちろん。君たちだってかわいいと思うだろう?」
「かわいいな。雷蔵と違って。」
「うん。純粋だし。雷蔵と違って。」
「いい子だね。雷蔵と違って。」
「その通り。」
否定はしないのか。
ちょっと反省して自分を改めてほしかった三人は少し遠い目をして無駄な努力を悟った。
「ごちそうさまでした!」
その時三郎が元気な声で手を合わせた。
「お。美味かったか?」
「うん!ありがとうおにいちゃん!」
「いいよいいよ。食べてるときリスみたいで可愛かったし。」
「?えへへ?」
よく分からないながらも褒められたのは分かったのだろう。嬉しそうに笑って雷蔵の膝から飛び降りた。
しかしすぐにクルンと振り向くと、「なにして遊ぶっ?」と俺たちを見上げてきた。
温かい感触が離れて少し寂しそうにしていた雷蔵が「三郎はなにしたい?」と逆に聞き返す。
そして三郎の視点に合わせてかがんだ雷蔵に、三郎は最高の笑顔を向けた。
「かくれんぼ!!」。


雷蔵の家はデカイ。それこそかくれんぼというよりは探検に近いほどデカイ。
「隠し部屋でもあるんじゃねぇの?」
「だめだよ使っちゃ。三郎が見つけられなくなっちゃう。」
あるのかよ。
呆れて言葉も無い三人の視線を背中で受けながら雷蔵は「じゃあ三郎!百数えてね!」とその頭を撫でていた。
「うん!」と雷蔵そっくりな顔で、しかし雷蔵とはかけ離れた純粋な笑顔で頷き、三郎は壁に目を押し当て「いーち、にーぃ、」と数えだす。
さてでは隠れるか、と竹谷、兵助、勘右衛門も足を踏み出すが、その途端に喉が締め付けられ「ぐえっ」と喉がなった。
「ちょっと君たち、隠れる前に聞いてくれる?」
竹谷は腕を首にかけられ、その先には兵助が襟を掴まれていた。見れば勘右衛門も反対の手で首根っこを押さえられている。
この馬鹿力っ!
懸命に抜け出そうとするものの、優男の外見に似合わずその腕はびくともしない。
そろそろ息が苦しいと思い始めたころに、雷蔵が小声で囁く。
「いい?三郎が絶対見つけられないようなところに隠れるなよ?最後まで見つけられなくてもし泣かせたら、ゲイ雑誌を君たちの机に突っ込むからな。」
ビクッと兵助が体を震わせる。兵助は一番同性からの告白率が高い。
兵助の大きな目が殺気を帯びて竹谷と勘右衛門を睨む。こうなれば一蓮托生だ。
残りの二人も頷くのを見ると、雷蔵は優しい笑顔を浮かべて三人を解放した。
「忘れないでね。」
その言葉が恐ろしい。
しかし三郎の声も「さんじゅーし、さんじゅーご、」とリミットが迫っていた。
今度こそ全員、その場を後にする。


「ひゃーく!!」
ぱっと三郎が顔を上げれば、そこには誰も居なかった。
きょろりと首を巡らせても人の影は見当たらない。
三郎は少し考えたあと、ぱたぱたと小さな足音をさせてそこから走り去った。


かちゃり、と軽い音をさせて開いた扉に三郎の顔が綻ぶ。
雷蔵からは鍵のかかっている扉には入ってはいけないと言われているのだ。
ずっと探検したいと思っていた家を好きなように動き回れることは、幼い三郎にとって大層魅力的であった。
「んー…。」
ベッドの下やクロゼットの中、床まで届く分厚いカーテンの裏なども見たが人影は見当たらない。
そしてふと顔を上げる。
「あ。」
「ありゃ。」
「ハチ兄ちゃんみっけ!!」
器用にもクロゼットの上に乗っていた竹谷を、三郎が輝く笑顔で指差す。
「あーあ。見つかったか。」
「うん!一番!!!」
「まじか。」
ちょっと悔しいのは小さい子の前では秘密である。
「うし!!他の奴も捜すぞー!!」
「おー!」
二人が手を繋いで部屋を出ると、竹谷はぞわりとした悪寒を感じた。
それと同時、ポケットの携帯が鳴る。
「なぁに?」
「なんだろなぁ。」
ぴょんぴょん跳ねて覗きこもうとする三郎の頭を撫でながら届いたメールを開封した。
『僕に無断でそれ以上触るなよ。』
(怖っ。)
それだけ書かれたメールに慌てて周囲を確認するものの、雷蔵の影も形もない。
「…どこで見てんだよ。」
「ハチにぃちゃん?」
「あ、ああ悪い。行くか。」
「うん!」
頷く子供は間違いなく可愛いが、その背後に見える保護者の黒いオーラに怯える竹谷であった。


「ん?ここはどうだ?」
覗きこんだ部屋は娯楽室というのだろう。古めかしい内装にビリヤードやダーツなどが並べられている。
「…こんな専用の部屋まであるんだもんなぁ……。」
普段使わせてもらうこともあるのだが、この家の規模には本当に呆れてしまう。
そのくせ、雷蔵はあまりお坊ちゃんの雰囲気は出していない。普段は本当に普通の高校生なのだ。
…まぁ本性は多少ひんまがってはいるが。
竹谷はちらりと隣の小さな頭を見下ろした。
三郎は部屋にあるものが珍しいのかきょろきょろと好奇心いっぱいに部屋を見渡している。
「あ!」
「ん?」
三郎がぴたりと顔を向けた先。
トランプやゲームの小道具を入れているはずの棚があった。
視線を下に落とすと、見覚えのある布。
(おいおい…。)
パタパタと走ってそこへ向かう三郎を見ながら竹谷は呆れのため息を吐いてしまう。
「秀才なんだからもっとさぁ…。」
「うるさい馬鹿ハチ。お前に俺の気持ちがわかってたまるか。」
「へーにぃちゃんみっけ!」
ギィ、と古い蝶番の音をさせて開いたところには、学校では秀才と評判の兵助が狭そうに入っていた。
…ひょっとしたら布を挟んだのはわざとなのかも知れない。
この男の苦心の策に思い至って竹谷の顔が同情的なものになる。兵助はそれから顔を背けると、「行くか。」と三郎の手をとった。
「あ。」
「ん?」
途端に「とーふとーふ♪」と流れる音楽。
三郎が「とーふ??」と首を傾げる横でパカリと携帯を開いた。
「!!!」
「あー。」
ビクリと兵助の体が震え、周囲を慌てて見渡している。メールの内容は想像がついたので、竹谷は苦笑を浮かべて涙目の兵助の肩を叩いた。
「お…おれが、おれがいったいなにをしたと…………。」
「あーうんうん。我慢だ我慢。」
「ううう…。」
「???」
俯き涙目の兵助に、三郎はポスンと抱きついた。
「どうした三郎?」
「…へーにぃちゃんどうしたの?おなかいたい?」
「!だ、大丈夫だよ。」
心配そうな三郎に兵助は慌てて笑顔を向ける。
それを見た三郎またほっとしたように笑顔を浮かべて兵助の手と竹谷の手をとった。
「いこ!あとはらいぞうとかんにぃちゃん!」
「そうだな!」
「…あいつら性格悪いからな……。どこに隠れてるやら………。」
「雷蔵に聞かれてるかもしれないのにその呟きは勇気があるな兵助。」
はっとして兵助が周囲を見渡すものの、姿が見えるはずもない。
「どーしたの?へーにぃちゃん?」
「いや…なんでもないよ…。」
ふふふ…と力無く笑いを零す兵助を横目に見ながら竹谷は残りの二人を探すべくあやしい影を探す。
三郎は扉に駆け寄り、鍵の掛かっていない戸を探している。だがどれも空振りらしく頬を膨らませていた。
竹谷がその表情に癒される自分を感じながらその頭を撫でてやると、三郎がくりんと大きな目で見上げてきた。
その顔に笑いかけ、「一度戻るか!」と三郎の手を引く。
「ああそれがいいな。あいつら家の反対側に居るかもしれないし。」
「そっか!!」
膨れていた顔が一転して明るいものに変わる。そして竹谷に引かれていた手を逆に引っ張るように走り出した。


「あ。」
「あ。」
「お。」
「あーー!!!」
「あはは。見つかっちゃった!」
「っていうかお前隠れる気あんのか?」
「移動しようとしたらハチたちが来たんじゃない。」
最初に三郎が数を数えて居た廊下を少し過ぎたあたり、開いた扉の前で勘右衛門が苦笑している。
「かんにいちゃんだめだよ!!ちゃんとかくれてなきゃ!!」
「さっきまでちゃんと隠れてたよ?ほんとだよ?」
顔を赤くさせて怒る三郎をなだめるように勘右衛門が頭を撫でていた。
「まぁ勘も見つかった(?)ことだし、あとは雷蔵か。」
「家主だからなぁ。探すのは大変そうだ。」
「だいじょぶ!!」
「三郎?」
ふぅむと首を傾げる三人に、はっきりと三郎が断言する。
「らいぞは、私がすぐに見つけるよ!!」
そして今度はだれの手も取らずに走り去ってしまう。
その小さな背中を見ながら、三人は顔を見合わせていた。



「ふふふ…。三郎はかわいいなぁ。」
ぼんやりとした灯りが灯る部屋で、雷蔵はそう小さく呟いていた。
「さて、そろそろ行かなきゃね。」


三郎は広い部屋を走っていた。
大好きな雷蔵の姿を求めてその姿を懸命に探す。
フワフワの髪や、目を細めて笑う姿、それに三郎を軽々と抱き上げてしまう腕。基本的にのんびりしているけれど、それは小さな三郎に合わせてくれていることも知っている。
「…らいぞっ!いた!!」
「あ。見つかっちゃった。」
そして微笑む大好きな人に小さな体を飛びこませた。
「…ほんとにいるし。」
「三郎すごいな。一発か。」
「………………。」
ただ勘右衛門はじっと雷蔵を見つめていた。
それに雷蔵も気づき、そっと口元を緩める。
「さて三郎。走りまわって疲れたでしょ?居間で少し休もうか。」
「雷蔵もいっしょ!!」
「もちろん。」
ひょい、と軽く三郎を抱き上げて雷蔵が歩き出す。
そして居間に着き、ソファに座った途端うとうとしだした三郎を、雷蔵は優しく撫でてやっていた。
やがてポスン、と雷蔵の膝の上に倒れて眠った三郎を四人は微笑まし気に見つめる。
「…三郎かわいいでしょ?」
「まぁな。」
「うん。ほんとに、雷蔵の親戚とは思えない。」
「ふふ。」
「でも雷蔵、いくら可愛くっても盗撮はいけないと思うよー?」
「「!!」」
「なんだ。気づいてたの。」
驚く竹谷と兵助とは反対に、二人ともまったりと茶を啜っている。
そんな雰囲気に合う会話ではないと思うのだが。
「そりゃね。びしばし視線感じたし。」
「防犯用だよ。それをちょっと利用しただけさ。」
「え、ちょ、どういう……。」
動揺する竹谷に勘右衛門が「気付かなかった?」と微笑みかける。
「こんだけデカイ家だし、あの鍵がかかってる部屋のうち一つくらいモニター室があっても良いんじゃないかと思ってね。」
「モニター室は僕の部屋の奥だよ。」
「へ?でも……。」
「三郎が俺等を見つけたあとのタイミングで出てきたんだろ。」
「やだなぁ。勘。全部お見通し?」
「似たもの同士だからねぇ。」
「なるほど。」
なんだか通じ合って頷いている勘右衛門と雷蔵をよそに、竹谷は混乱し兵助はなにやらプルプルと震えていた。
思い当たる節は当然あった。あの三郎と手を繋いだ途端来たメールとか。
「っ雷蔵!!ってことは、」
「性格悪くて悪かったね。」
そのまま兵助は倒れた。
(終わった…俺の青春は、人生はお終いだ………。)
「へーすけーー!!傷は浅いぞ!しっかりしろ!!」
「僕はよっぽど信用がないのかな。」
「あはは。雷蔵それなんの冗談?」
兵助を揺さぶる竹谷を性格の悪い二人が冷めた目で見つめている。
その中心で、三郎は天使のような寝顔で雷蔵の膝に顔を埋める。
優しい眠りの世界で、三郎だけがそっと笑っていた。


おしまい




あとがき
やっ、ち、まっ、た……!
しかし後悔はしていない!!ちびっこ好きなんだーーー!!ちび三郎は絶対かわいいんだーーー!!
ちょっとジャンルを雷鉢にするか迷ったけど一応五年カテゴリにしてみる。
でもきっとあと数年したら雷鉢に移動する展開だよね^p^

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