酔狂な夜
ぺた、ぺた、と廊下を裸足で歩く音は二つ。
一つはかろうじて規則的に歩こうとしているが、もうひとつは酔っているらしく千鳥足なのが分かる。
「もう、三郎。いい加減にしておけばいいのに。抱っこして運ぼうか?」
「ん〜ん。いい。」
竹谷の部屋での酒宴の帰りだ。雷蔵は三郎の体を支えながら二人の自室へ帰ろうとしていた。
しかし三郎はよろよろと足元がおぼつかないのが楽しいのか、先ほどからずっとニコニコしている。
雷蔵としては抱えてしまった方が早いのだけれど、かろうじて意識がまだ少し残っているらしい三郎はそれを笑いながら拒否する。
「だぁってらいぞーイヤラシイことするんだもん。」
「…しないよ。」
「うそだぁ。」
きゃらきゃらと高い声で笑う三郎を横目に雷蔵は心の中でため息を吐く。
(そりゃしたくなるよ…。かわいいもの。だもん、ってなんだよ可愛いんだよくそう…。)
「らーいぞ?」
「ん?」
「らいぞ?どうしたんだ?」
酔って紅潮した顔で、三郎が雷蔵を覗きこんでいる。それに唾をぐっと飲み込んで、雷蔵はいつもの笑顔で「大丈夫。」と答えた。
普段ならおいしく頂く状況だが、今日は駄目だ。
夕べも無理をさせてしまったし、毎日の訓練に影響するようなことがあってはならない。
この、努力することを惜しまない天才を、自分のせいで評価が落ちるようなことはしたくなかった。
(我慢だ我慢…。耐えろ僕……。)
しかし酔って理性を無くしかけている三郎は、そんなことお構いなしに雷蔵に近付き触れてくる。
肩に回させていたはずの腕がいつの間にか外され、つぅ、と雷蔵の項を撫でた。
ゾクリと背筋を走る感覚に身ぶるいして「なに!?」と三郎から体を離す。
いつもならそれだけで泣きそうな顔をするというのに、三郎は「えへへ。」と笑って小首を傾げている。
「雷蔵、そこに黒子あるんだ。知ってたかい?」
「はぁ?ほ、ほくろ?」
「そう。」
「知らないよ。こんなところ見えないもの。」
「そうだろうそうだろう。ほら見て雷蔵。」
嬉しそうに頷く三郎がくるりと後ろを向き、雷蔵のものを模した髪を手で避ける。
その仕草の、なんと色っぽいことか。
現れた項は酔って桃色に染まり、夜着の白によく映えている。
そしてそこに、小さな黒子が見えた。
「雷蔵と、おそろい。」
またふわりと髪をなびかせて、三郎が振り返る。
「雷蔵の知ってるところ全部、おそろいにしたんだ。」
その、言葉と、赤い顔ではにかむ、可愛い笑顔に。
雷蔵が逆らえるはずもなく。
熱くなったその腕を意識の及ぶ限り優しく掴み、部屋に連れていく。
すぐに辿りついた部屋に灯りをともし、二人をほの赤く照らした。
灯りに照らされた三郎は突然黙って部屋に帰った雷蔵に不安気に瞳を揺らしている。
「らいぞ?」
「ねぇ三郎…。全部って、あとどこがあるの?」
そんな三郎に雷蔵は欲を隠し、優しく問う。
「僕、全部見てみたいなぁ。」
「ら、雷蔵がそう言うなら!!」
「うん。僕のどこにあるのか、教えながら見せてね。」
「わかった!!」
自分の技に興味を持ってくれた雷蔵を三郎が拒否するはずもなく。良い返事をして素直に頷く三郎に雷蔵はひっそりと笑みを浮かべた。
これから起こる三郎の痴態に、笑みを隠しきれない。
しかしそんな雷蔵に気づかず三郎はまず襟を乱し、右肩に現れた傷と黒子を指差した。
「ここだろ、あと、ここにも。」
左肩も露わにし、さらに二の腕も晒す。肌蹴られた夜着は扇情的に三郎の肌を少しずつ退いていった。
「三郎。」
「あと、ん?なぁに雷蔵。」
「ほら。僕のどの辺りにあるのか、ちゃんと教えないと。」
「ああそうか。そうだったな。」
まだ酒が抜けないのだろう。いつもより幼く、ぽやんと三郎が微笑む。
そしていそいそと雷蔵ににじり寄り、正面に座るとそっと手を伸ばした。
三郎の、熱くなった手が雷蔵の肌に触れる。
「…ほら。ここにある。」
「本当だ。気付かなかった。」
肌蹴られた肩を見ながら雷蔵がそう言うと、三郎はますます嬉しそうに笑って反対側の肩も露わにする。
雷蔵の体も三郎と同じに晒されていく。
「それから、ほら、ここ。」
背を向けて、三郎が背中を指差す。そこにも小さく黒子があった。
そこへ、そっと雷蔵が指を這わせると、三郎の背がビクンと震えた。
それに気付かないふりをして「ふぅん。こんなところにもあるんだ。さすがに僕も自分の背中は見えないもんな。」と感心する。
顔を近付けると吐息が三郎の背にかかる。息の当たった背がまた震え、三郎は背を反対へ向けてしまった。
「ら、らいぞう、擽ったい…。」
「ああごめん。」
我ながら白々しい笑顔で謝るが、三郎はただ頷いて体を向かい合わせの形に戻した。
少し機嫌を損ねてしまったらしい三郎に手を伸ばす。
「ほら。あとどこがあるのか教えて?三郎、僕とおそろいにしてくれたんだろう?」
「……うん。」
小さい子のような返事だ。
それに雷蔵は微笑んで三郎の頬をそっと撫でた。
それに少し機嫌を戻したらしく、照れたような笑みを浮かべて三郎が今度は膝を立てた。
広げた足のその奥に見える下穿きに知らず唾を飲み込んだ。
三郎はやはりそんな雷蔵に気づかず、白く綺麗な足を雷蔵の前に晒す。
「ん…ほら。ここ。脛のところ。それと………。」
「三郎?」
足の先から順に指差す三郎の手が、膝の辺りでふと止まった。だが雷蔵が優しい声音で呼ぶとそっと夜着を捲って白い太ももを晒す。
その色に吸いつけられるように、雷蔵はじっと視線を落とした。
「あと………ここ。」
「……そこ?」
足の付け根ギリギリの辺り。確かに自分でも確認出来る場所ではあるが、雷蔵は覚えが無い。
何故三郎がそんなところを知っているの考え、そして思い至った結果に笑みが漏れた。
「……ほら、三郎。僕にちゃんと教えなきゃ。」
「えっ、あ……。」
先ほどよりますます顔を赤くして三郎が視線を彷徨わせる。
泣きそうに歪んだその顔にまた欲を掻きたてられて、その腕を強く引いた。
「うわ!!」と三郎の体が特に抵抗もなく胡坐をかいた雷蔵の足に倒れ込む。
「ほら三郎。」
「うう………。」
「僕に、教えて?」
半ば脅迫めいたその口調に、三郎は涙目で一度雷蔵を見上げると、そっと雷蔵の夜着の裾へ手を掛けた。
いつもなら顔を真っ赤にして拒否しただろうに。やはり酔っているのだろう。いつもより素直な反応に愛しさが募る。
震える指先で探る三郎の頭をそっと撫でてやれば、先ほどよりは恐れの抜けた目でもう一度雷蔵を見上げた。
「見つかった?」
「…うん。」
恥ずかし気に顔を再び俯かせながら三郎は雷蔵の足の一点を指差す。
だがその手は雷蔵の猛りにも触れていて、その熱さに三郎の目も欲に煙って行くのが見える。
「…三郎。偉いね。全部、見てたんだ。……僕のを舐めながら、ここまで見てた?」
「やっ、」
「腕も肩も、お前は良く見るものね。僕に抱かれながら、そんなによく見ていてくれたの?」
「ち、ちが!!」
「じゃあ、三郎はいつも僕の、こんなところをみているのかな?」
そして雷蔵が指差した先にますます三郎は顔を赤くして、腕で顔を隠そうとする。
だがもちろんそれを許す雷蔵ではなく。
隠れようとするその腕を掴んで再び引き寄せる。
「ら、らい!!んム!!」
愛しくてたまらない体を抱きしめ、先ほどから可愛いことを言っていた唇を思い切り吸った。
開いた視線の先では三郎が苦しそうに目を瞑っているのが見えたが、それと同時に酒だけではない顔の紅潮に気がついてそっと唇を離す。
ぷはぁ、と唇から銀の糸を雷蔵と繋げて、三郎は蕩けた目で雷蔵を見つめた。
その、欲に溶けた目に雷蔵はまた背筋がぞくぞくと震えるのを感じる。
自身の猛りがまた大きくなるのを感じて、窮屈になった下穿きを解く。そしていまだぼんやりしている三郎を引き寄せ、下半身へ顔を近付けさせた。
「ほら。三郎。」
猛りの先端を三郎の唇に押し当てる。すでに先走りが漏れ出している先端がぴちょり、と濡れた音を出して柔らかい唇に触れた。
逃げようにも頭を押さえられて逃げられない三郎が諦めたようにそっと唇を開く。
間も無くして迎えられた温かい感触にくらりと目まいがする。
じゅる、ちゅぷ、と唾液と精液を啜る音が部屋に響く。恥ずかしそうに目元を赤く染めながら、三郎はちらりと視線を横に流した。
その視線の先に気づき、雷蔵はぐっと腰を三郎へ押し付ける。
「ふぐぅ!」
「よそ見しないで。三郎。そんなに見なくても、位置が変わったりしないよ。」
「ふっ、うぅ……。」
「ほら、出すよ。ちゃんと飲んでね。」
「んぶっ、ぷふぅ、う。」
ごきゅ、こきゅ、と溢れそうになる精液を飲み干す。その度動く喉の感触に雷蔵自身がまた固くなるが、ずるりと三郎の口内から退いた。
「ちゃんと全部飲んだね。いい子だよ三郎。」
「ん………。」
頭を撫で、頬を優しく撫でる雷蔵の手に三郎がうっとりと目を閉じる。
「ねぇ三郎、知ってる?僕も、三郎の知らない黒子の位置があるんだよ。」
「へ…………。」
「ふふ…。」
小さく笑って、雷蔵はくったりと足に凭れる三郎の体を反転させ、足を高く掲げた。赤子のおしめを変えるような格好に三郎は慌てて暴れようとするが、途端に三郎自身を握られそれも出来なくなる。
「ああ…ほらあった。ここだよ。」
「え…。」
「ずっとかわいいなぁと思ってたんだよね。」
そしてつつ、と雷蔵が指を撫でた先。雷蔵の足の付け根のそれよりさらに奥まった位置。睾丸の下辺りだった。
さすがの三郎もそんな鏡を使わなければいけないような、しかも恥ずかしい場所の黒子など知らない。
ぱくぱくと口を動かし言葉も出ない三郎に構わず、雷蔵は舌を伸ばしてそこを撫でた。
「ひぅ!!」
「あはは。可愛いね三郎。ここも感じてしまうのかい?ああ濡れてきた。」
上から垂れてくる前走りに苦笑して、それから避けるようにそこから頭をどける。さらに下に移動した雷蔵の舌は今はまだ固く閉じられた蕾に辿りつく。
くち、と触れられたそこに上げられたままの三郎の足がビクリと震えた。
「んっ、あ、ふぁあ!!ああ!!」
「…もうやらかいね。お酒のせいかな?それとも、」
雷蔵は三郎の足を下ろして顔を三郎の耳元に近づけ、囁く。
「舐めてて期待した?」
「あ!ああああ!!!はっ、ぁアア!んゃあ!!」
囁きと同時に埋め込まれた指に体が悦ぶ。
腰ひもに引っかかるだけになった夜着を解き色づけられた三郎の体が露わになる。
雷蔵が指を動かすたびに震える体は、三郎が雷蔵とおそろいにしたのだという。
「…ほんとに、かわいいよお前は。」
「あああ!!やンっ!あっ、あああっ。はぁあん!アん!」
嬉しそうに笑っていた顔は今は涙目になり雷蔵を見上げていて、それにまた欲がムクリと膨らむのを感じる。
堪らない気持で開いたまま喘ぐ三郎の口を己のそれで塞いで、柔らかくなった蕾から指を引き抜いた。多少いつもより早いが、三郎が可愛い事ばかり言うのだから仕方がない。
代わりに、先ほどから熱くて仕方がない雷蔵自身を押し当てる。
(…こればかりはお揃いにできないなぁ。)
と雷蔵は内心苦笑しながらヒクつくそこへ腰を推し進めた。
「ああああああ!!!あ、はっ、あ!!」
大きく成長した雷蔵を受け止め荒い息を吐く三郎の体に、雷蔵が赤い印を次々に散らしていく。
そんな微弱な感覚からも快楽を拾い、三郎はその度に小さく喘ぐ。
きつかったナカが次第に慣れてきて、雷蔵はゆっくりと腰を動かした。
「あ…っ!あ、あン!はぁっ、ああああっ」
「三郎…。」
ビクリビクリと雷蔵の与える快楽に体を震わせる三郎が可愛い。
酒に酔ったのか快楽に酔ったのか分からない蕩けきった目は焦点の合わないまま雷蔵を見上げている。
それをもっと酔わせようと雷蔵も快楽に霞む頭で体を動かす。
ぐちゅんっぱちゅっと響く濡れた音に三郎が恥ずかしそうに顔を逸らすがそんなこと雷蔵が許さない。
三郎の顔に手を添えて向きを戻すと再び唇を塞いだ。
「んっ、んんーー!!ぷはっぁ、らい、ぞっくるしっンン!!」
苦情を言う三郎に構わず再び唇を塞ぐ。
酸欠になりながらも三郎は腰を揺らし雷蔵に合わせて快楽を追おうとする。
混ざり合う舌と、雷蔵の腹で擦れる三郎自身と三郎のナカに埋められた雷蔵自身。全てが快楽を呼び二人の意識を痺れさせた。
「はっ、さぶろ…!」
「あ!!あああ!!らいぞ、あっ、でちゃ、あああああ!!!」
「んっ!」
二人の体が震え、それぞれ欲を吐きだす。
荒く息を吐きながら、雷蔵は三郎から自身を抜いてぐったりと同じく荒い息を吐く三郎の横に転がった。
そんな雷蔵を、三郎の目が追った。
「…なに?」
「んー。」
酔いは醒めたのだろうか?思案する眼差しはいつもと同じに見える。
だが。
ごろりと三郎が雷蔵の上に転がってきた。
「さ、さぶろう?」
「………む。」
いや、む。でなく。
ふくれっ面は大変可愛らしいのだが、何をされるのかと内心焦りながら雷蔵は三郎を見上げた。
だがその視線は、三郎の頭が下がってくるのと同時にどんどん下がり、胸に先ほど散々貪った唇の感触が当たる。
チクリとした痛みに、三郎がなにをしたのか知った。
上げられた顔は笑顔で。先ほどのように「お揃い。」と言われて、雷蔵は少し復活した己の理性がまたちりちりと焼けていくのを感じる。
「さ、さぶろう…。」
「なに?」
「そんなことされると、またしたくなるんだけど…。」
「…しないの?」
きょとん、と目を開いた三郎の表情は幼いというのに、言っていることは大人のそれだ。
雷蔵はため息を吐きそうになりながら、「明日に差し障るだろ。」と伝える。
しかしそれにまた三郎は小首を傾げて「なぜ?」と聞いてきた。
「…足腰立たなくなったら大変だろう?」
その言葉にぱっと顔を赤くして俯いた三郎にやっと通じたかと雷蔵が微笑む。
だが、赤くなりながらも三郎がそっと耳打ちした言葉にはまた目を見開き、そして今度こそ理性などかなぐり捨てて三郎を押し倒した。
『明日は休みだぞ?』
あとがっき
今日一日妄想してたネタ。そして6月8日のあにたまで頭パーンなった結果。
頑張った…。エロ久々な気がするなぁ………。