Smile

はぁ、と吐いた息が白い。
なんだかそれが楽しくて、じっと空に消えるそれを見つめていると、温かい手が私の肩を抱いた。
「またこんなところで。寒いだろ?」
「雷蔵。」
彼はいつも温かい。心も、体も。
じんわりと肩から伝わる温かさに笑みが零れる。それにまた雷蔵も笑みを深めて私の隣へ座った。
「何考えてたの?」
「何も?」
「ほんとに?」
微笑みながら私の顔を覗きこむ雷蔵に、ふふ、と吐息のような笑いが零れた。
「なぜ疑うんだい?」
「だって、三郎は何も考えてないって言いながら、ずっとなにか考えていることがあるからね。」
「鋭いね。」
ニヤリと笑みを変える私が、雷蔵の瞳に映る。
「実は雷蔵のことを考えていたんだ。」
「僕のことを?」
雷蔵は面白そうな顔になり、私の肩に回していた手を外した。
途端ヒヤリとした空気に触れる肩が寂しい。
しかしその雷蔵の温かい手はすぐに三郎のそれに添えられる。長い間外に居てすっかり冷えてしまった手に、雷蔵が顔を顰めた。
「…僕の事を考えてくれるのは嬉しいけどね。三郎。」
「うん。」
「…これから、もっと温かい部屋で、考えるようにしてくれ。」
「雷蔵がそれを言うか?」
悩み出してしまえば所構わず動きを止めてしまう癖に。とまた笑えば雷蔵の顔も苦笑に変わる。
「それを言われると辛いけどね。でも、君が心配なんだよ。」
わかるよね?と見惚れる程の笑みで言われてしまえば、私に頷く以外の選択肢など出来るはずも無く。
ただ温かい手に握られた自分の手を見て俯いた。
顔が赤くなっていることなんてきっと雷蔵にはお見通しだ。それでも、顔を上げられない。
(ああ…。雷蔵好き…。)
「三郎?」
「…雷蔵。」
「うん?」
「好きだよ。」
俯いたまま想いを告げる私に、雷蔵が一瞬黙る。だがすぐに私の正面に回って、俯く私の視界に入り、とびきりの笑顔を浮かべて、
「三郎。好きだよ。」
と言ってくれた。
雷蔵の目に映る私はやはり真っ赤な顔をしながら、それでも喜びの笑みを浮かべていた。
喜びのあまり目の前の雷蔵に抱きつけば、そのままひょいと子供のように抱えあげられてしまった。
「さあ。暖かいところに行こうか。」
「ら、雷蔵!自分で歩ける!!」
自分の下にある頭に向かって叫んでも、雷蔵はご機嫌な様子で私を離さない。
「やだよ。今日は僕が三郎を甘やかしたい気分なんだ。それにね。」
雷蔵の薄茶の目が上目づかいに私をちらりと見る。
「あんなかわいいこと言われて僕が何もしないと思った?」
「え。」
「我慢なんてしないよ。僕は。君を、僕でもっといっぱいにしたい。」
もっともっと僕のことを考えていればいい。
暖かいところで、ね。
そう、笑う雷蔵が。
私はどうしようもなく愛おしくて。
ただ黙ってその首にしがみついた。



あとがき
とりあえず甘い。
かっこいい雷蔵を目指したんです。決してえろい雷蔵を目指した訳では…っ。
タイトルは、なんか「笑う」って単語がやたら文中に出てきたので。

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