しびしび





雨が静かに降る音がする。

今日は休日だが、雷蔵はそれを残念には思わなかった。
雷蔵が文机で本を読み、三郎は壁に背を預けてなにやら手を動かしている。
そこには、常には無い静かな空気が流れていて、雷蔵はそれが嫌いではないのだ。
むしろ心地よいものとし受け止め微笑みすら浮かべていた。
しかしその静寂が、突然遮られる。
背後からの「ひゃん!」という甲高い声によって。
「三郎!?」
常には出さない声に雷蔵が勢いよく振り返ると、三郎は足を曲げて座ったままなにやら俯いていた。
「どうしたの?」
「な…なんでも……。」
そう言うが三郎は何故かふるふると体を震わせて動く気配がない。
体制から見て立ち上がろうとしていたのだろうが、まったく動かない三郎に雷蔵が首を傾げる。
「三郎?どこか行こうとしたんじゃないの?」
「い、いや……。」
「ん?」
三郎が顔を上げたが、その表情は奇妙に歪んでいた。
「ちょっと…体勢を変えただけだよ雷蔵。」
かろうじて微笑もうとしているらしい。が。三郎らしくもなく完璧なそれではない。
雷蔵は座ったままずりずりと三郎に近づいてみる。
だが、三郎はそれから逃げるように雷蔵が近づく度体を仰け反らせていく。
「……………三郎。」
「な、なにかな?」
そっぽを向いて視線を逸らす三郎の目は泳ぎ、しかしそれ以上雷蔵から離れる様子はない。
その様子に雷蔵は笑みを浮かべて頷いた。
「……足痺れた?」
「……………………違う。」
たっぷり沈黙してから笑顔で否定するが、ひきつった笑みは変わらず隠せていない。
雷蔵はそれこそ完璧な笑顔で「どっち?」と聞くが、三郎は「だから違うってば」とまだあがこうとする。
雷蔵がそっと畳まれた足に手を伸ばすと、ビクリと怯えたように体を震わせるがやはり逃げる様子はない。
「…ふぅん……両方なんだ。」
「………………。」
否定せずに三郎はひたすら雷蔵から顔を背ける。
そんな三郎に、雷蔵はもちろん容赦をするつもりはない。
「じゃあ三郎。」
「ひっ、」
「遊ぼうか。」
いつもの笑顔と変わらないのに。三郎はその背後に黒いオーラが見えて仕方がなかった。
「いっ!!ひゃん!!きゃあ、あ、あ、ひっや!!!!らいぞ!やめ、いたい!!!」
「ほらしっかり揉まないと。いつまでたっても痛いよー。」
「やだやだもういい!!!ひっ!ぅあ、あぅぅぅ!!!いたいってばぁ!!」
「ほらほらもうちょっとー。」
「ひぅ…は、ぁ…あ…。」
痺れて動かない足を雷蔵に思い切り揉まれ、三郎は息も絶え絶えに床に突っ伏している。
だが痺れはようやくとれたらしく、雷蔵が三郎のふくらはぎを揉んでももう叫ぶことはなくなった。
ただ疲れたように息をする三郎に「なんだ。もうおしまい?」と雷蔵は満足そうな笑みを浮かべてその足を放す。
そんな雷蔵に三郎は恨めしげな目を上げて「覚えてろ…。」とそれこそ使い古された捨て台詞を吐いたのだった。


あとがき
アソビはこれを白雷蔵と言い切ります。ほらだっていつもからかわれてるから、ね?
ちょっとくらい悪戯したっていいじゃない。
そんな白雷蔵はとてもかわいいと思うよ。
あと痺れた足触ると喘ぐ人っているよね(笑)

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