策士の悪戯





「トリックオアトリート。」
「あ?」
「トリックオアトリート。」
ニッコリと、兵助は不機嫌そうな三郎の顔を見下ろした。
三郎は手に衣装を持ったままで、着替えは済んでいなかった。兵助はというと、白衣に聴診器に名札まで付けて医者スタイルだ。手抜きなのが丸わかりである。
「…言う順番が逆じゃないのか?」
「ん?」
「私が先だろう。普通。」
「だって三郎まだ着替えてないじゃないか。」
「うるさい。いいからよこせ。」
「はいはい。」
理不尽な言い分には慣れている。
その三郎の手に菓子を乗せてやり、兵助は戸を閉めてその部屋へと入った。
「三郎がまだ支度終わってないなんて珍しいじゃないか。」
「さっき衣装が出来あがったんだよ。」
三郎は貰った菓子袋の中身に笑みを浮かべながらもさっそくそれを食べている。色とりどりの金平糖はお気に召したようだ。
兵助はその場に座り、三郎の着る予定の衣装を眺めてみる。
「何これ?」
「天狗だよ。」
衣装自体は山伏のものを使っているのだろうが。その背中にちゃんと羽が生やされている。
「相変わらず凝り性だな…。」
「良い出来だろう?」
今日は三郎の本領発揮の日だ。機嫌がいい。
兵助はその三郎にニヤリと笑って、「トリックオアトリート。」と三度目の科白を言う。
三郎はまた一つ金平糖を口に入れ、呆れたような視線を兵助に向けた。
「用意してると思うか?下級生の分はともかく。」

「なんだ。悪戯するぞ。」
「ふふん。天下のトリックスターである私に出来るものならな。」
出来るものならやってみろ、と笑う三郎に兵助は呆れた視線を返す。
はずだった。
「三郎。衣装着て無くてよかったな。」
「ん?」
「せっかく作ったんだ。台無しになるのは嫌だろう?」
「兵助…?…………っ!!お前、なに、」
勘のいい三郎は、すぐに手の中の金平糖を睨み兵助に詰め寄った。
兵助は座っているため、三郎もその場に膝を付く形になったが、その視線の鋭さは変わらない。
だが兵助は薄く笑ったままその視線を流す。
「お菓子くれないから、悪戯するぞ。」
「な、あ!?」
「ん。効いてきた?」
「な、な、何!!!??」
「伊作先輩の面白薬。」
詰め寄り兵助の服を掴んでいた手は縋りつくようなものになり、三郎は戸惑いの目を兵助に向ける。
自分に、今何の変化が起こっているのかわからない。
兵助はただにこにこと楽しそうにそんな三郎を見つめている。
「どれ?」
「ひゃっ!!」
「ああ。ちゃんと出てきた。三郎見てみる?」
兵助の手が三郎の尾てい骨の辺りをなぞると、ぞわぞわと何かが這いあがるような感覚を覚えた。
自身の体の変化に戸惑う三郎の体を持ち上げ、兵助は三郎を鏡の前に座らせる。
「ほら。見てみなよ。」
「ふぇ…?………ああああああああ!!!!!」
「あはは。かーわいい。」
「へぇぇぇすけぇぇぇぇぇぇぇ!!!!なんだよこれ!!!!」
三郎は猛然と振り向いて自分を抱える兵助の白衣を鷲掴みがくがくと揺さぶった。
しかし、その頭ににはちょこんと三角の耳が生え、怒りのためか膨らんだ尻尾を揺らしている図というのはあまり迫力が無い。
「言っただろ?伊作先輩特製愉快薬。」
あっさりと悪びれた様子もなく笑う兵助に三郎は口をパクパクと開閉したまま言葉も出ない。
混乱しているらしく、今自分が兵助の膝の上に乗っていることにも気がついていないようだ。
そのことにまた兵助は楽しそうに笑う。
「三郎かわいい。」
「うるっさい!!なんだよこれ!!どうするつもりだ!!」
「どうするって…それも言っただろ?」
「は?」
「悪戯するぞ。」
その言葉にようやく三郎は今の状況が分かったようで、慌てて立ち上がり逃げようとするがそれを許す兵助ではない。
「やだ!やめろ馬鹿!!」
「却下。」
兵助の体に手を付き離れようと腕を突っ張る三郎の目の前に、兵助が一本の枝を取りだした。
「ほら。これなーんだ。」
「へ……?」
見たところ、ただのなんの変哲もない。長さは掌くらいだが、森のその辺に転がっていそうな枝である。普段の三郎が見たところでそれがなんなのかは首を傾げるだけだっただろう。
だが、今の三郎にはそれが何なのか直ぐに分かった。
「ふぁ………。」
すんすん、とその枝の匂いを嗅ぐように顔を近付け、その匂いを嗅ぐたびに目がトロリと下がりだす。
「いいにおい………。」
枝を持つ兵助の手を取り、もっと匂いを嗅ぐようにそれへ顔を擦り付けた。
怒りに立ちあがりかけていた腰も、今はペタリと兵助の膝の上に落ち着いている。
兵助は期待以上の三郎の変化に顔を紅潮させた。
「…三郎、これ好き?」
「ん…。すきぃ………。」
兵助は手に持ったまたたびの枝を使い、三郎が仰向けに転がるように導く。
その枝しか目に入っていない三郎はあっさりとその場に転がった。
「へぇ、すけぇ…もっとぉ……。あむ……、」
「!!」
「ん、ん…はぁ……。」
三郎は兵助の手を掴み夢中で枝を咥え、うっとりと舐め上げている。
時折じゃれるように枝に噛みつき、そしてまたうっとりとそれを口から出して匂いを嗅ぐ。
ごくり、と兵助の喉が鳴る。
そっと三郎の遊んでいる枝から手を離しても、三郎は枝から口を離すことは無かった。今度は自分でそれを持ち、じゃれついている。
「想像以上だな………。」
兵助の呟きも聞こえていない様子で、三郎はまたたびに夢中だった。
それに兵助はまた唾を飲み込み、無防備に晒されている三郎の制服へ手を掛ける。
上着を肌蹴けさせ、袴を脱がせると兵助の足になにかがぺしぺしと当たる感触がする。
見下ろすと、三郎の尾てい骨から生えた細い黒の尻尾が大きく動いていた。
ちらり、と見た三郎はまだまたたびに夢中である。
何度も口に入れたまたたびは唾液でべとべとになりながら三郎の手に握られている。
「ふぁ、ん…ん…、ひゃぁあ!?」
ぞくんっ、と三郎の体を襲った快楽にころりとその手から枝が転がった。
「あっ、あ…っ、んやぁ!な、やん!!」
戸惑いながら三郎が見下ろした先で、兵助はグチグチと濡れた音をさせて三郎の自身を握っている。
「やぁあ!へ、すけ、あぁああ!!ん、あ!!」
散々またたびの匂いに酔った三郎は、その快楽を素直に受け入れてしまう。
兵助が数度、そこを扱き上げただけであっさりと達してしまった。
「はふ…はぁ、ぁ………、」
「ははっ、今日は素直だな三郎。」
「…る、さ………あっ!!や、あ!!へぃすけなにして!!?」
「ん?ここ、弄ってる。」
白濁に濡れた指が、ぐちゅり、と三郎の中で音を立てる。
くちゅんくちゅんと濡れた音が三郎の耳に入る度、その三角の耳をぴくぴくと震わせて首を振った。
「や、ぁ!…あっ!!アアっ、ひゃ、ぁああ!!」
「気持ちよさそうだな三郎。」
「や、やぁ!!」
「ん?何が嫌?」
あくまで指を止めないまま、兵助は身を乗り出して三郎に問いかけた。
「何が?嫌?」
「ふぁ、ぁ!あああ!ゆ、ゆび、ゆびやだぁ!!」
「そうか…指が、嫌なんだ。」
「はぁ、あぁんっ、ん、んん!!」
堪え切れない声を零しながらも三郎はこくこくと首を頷かせる。
「じゃあ指じゃなきゃいいよな。」
「へ……?!!!あああああ!!!!やぁな、っあああ!!!!」
ズッ、ズッと侵入してくるものに、三郎の手が堪えるように自身の制服を掴んで堪えようとする。
しかし兵助は止める様子など微塵もないまま手にした物を三郎の後孔に侵入させていった。
三郎は自分の中で暴れるそれに体を震わせ、目を見開いた。
「あああ!!やら、やっ、ァアああああ!!!」
「おいしそうだね三郎…。尻尾、しっかり咥えてる。」
兵助は両手を三郎の体から離し、勝手に動き三郎の中を蠢く様をじっと見つめている。
その目が、転がったままの枝を捕えた。
「ふにぁっ、ひ、ぅ、ぁああああ!!!アァん!!」
「三郎、もうこれはいいの?」
三郎は瞼を開き、兵助の持つそれをぼんやりと見つめる。
変わらず頭が痺れるような匂いを発するそれに喉が鳴るが、体は弛緩しきって動かない。
くすくすと、笑う声が上から注がれる。
「三郎、酒が入ると寝ちゃうけど酔う時はこんな感じなのか。」
「あ、…あっ、アン、ひゃ、ぁあっ!」
もう三郎は兵助の言葉の半分も理解は出来ていない。
ただ、快楽を感じる度に中で跳ねる尻尾と自分の体に翻弄されていた。
聡明な三郎が、今は何も考えず快楽に身を溺れさせている。その姿に兵助も荒い息を吐いた。
「………………。」
「ひっ、やぁああああああ!!!」
ぐちゅんっ、と勢いよく尻尾を掴んで三郎から引き抜く。
その途端三郎は一層激しく白濁を吐きだし、濡れた尻尾はぱしぱしと兵助の腕を叩くように暴れたまますぐに放された。
その代わり、兵助の手が三郎の腰を掴む。
ぐち、とあてがわれた熱に三郎が涙を浮かべた目で兵助を見上げる。
「ふ……へ、すけぇ……。」
「三郎。」
兵助は優しい手つきで、ふるふると震える三郎の耳を撫で、頬に手を添え、そっと口づける。
「んっ…んぅ…、」
「………いただきます。」
「はっ、あぁっ!アアアあああっ!!!」
散々弄られて広げられたそこは兵助をたやすく迎え入れた。その勢いで兵助は一気に奥まで腰を叩きつける。
仰け反るように胸を付きだす三郎の、その飾りを口に含んで、今まで堪えていた分を取り戻すようにガツガツと中を穿つ。
「あっああああっぃ、にゃ、ああああ!!」
「っはは、今三郎、にゃあって言った!」
「やぁああ!ひゃぁあん!!」
「なっ、もっかい、言ってよ。」
「や、ぁ、アン、やらぁああああ!!!」
三郎の足を抱え、その顔を覗きこむように体を倒す。さらに奥を抉られて、三郎は首を振って善がった。
「さぶろっ、」
「んっんぅーーっ!」
「ってぇ!」
さらに体を倒すと三郎は腕を兵助の背へ回し、その首筋へ思い切り噛みついた。
犬歯の生えている今、そこはたやすく兵助の皮膚を破ってしまう。
兵助は慌てて三郎の頭を離すとその唇を自分のそれで覆った。
少し血の味がするのに眉を顰め、快楽を引きだすように口内を舌が這いまわる。
「ふぅぅ!んっはっあっあふっ!んんーー!」
「んっ、」
口を塞いだまま、三郎の体が兵助の下で激しく跳ねる。
だがその後はくったりと体から力が抜け、見れば互いの腹が精液で濡れていた。
「はっはぁ、はぁ……、」
荒い息を吐いているのは二人とも同じだが、三郎は目を閉じたまま開かない。どうやら、気絶してしまったようだ。
ずる、と萎えた自身を引き抜き三郎の横にごろりと転がった。
まだ耳はぴくぴくと震えて三郎の頭にある。
「三郎かわいい。」
そっと触れると嫌がるように耳の動きが早くなるのにくすくすと笑う。
もう夜も更けた。学園の騒ぎは終わっていることだろう。
目が覚めた三郎は口を効いてくれるだろうか。
そのことを考えると嫌な予感しかしないが、兵助の表情は、今至って楽しそうである。


その顔は、悪戯の成功した子供そのものだ。




あとがき
おねだりされたので頑張って書いたハロウィン久々鉢。
困った時の伊作先輩!!!マッドサイエンティスト!!!
ちなみにまたたびの枝云々の描写はうちに猫を参考に。もう舐めるわ齧るわでえろかったので。



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