理由なんて
薄闇で本を読んでいると、微かに感じる気配。
本来ならば、気配を隠す必要など無いのに、こうして三郎の背後に忍び寄るのは、
「三郎。」
背後から、するりと手が夜着の袷の中へ滑り込む。耳元に流し込むように囁かれた言葉にぞくりと背中が粟立った。
「ねぇ、しようよ。」
まるで遊びを強請るような言い方、その中に含まれている艶を聞きとれぬはずもない。
三郎は読んでいた本をパタリと閉じる。
それが、合図だ。
「っひゃ、ぁあ!」
「ん、ふは…三郎、もう辛い?」
くくっと普段はしないような獣じみた笑い方。
三郎の足の間に顔を埋めて、雷蔵の目が蝋燭の光を反射してギラギラと光っていた。
「…ん、らぃぞぉ……っ。」
その目に今、自分が見られていることにもゾクゾクと背筋が震える。
ヒクリと大きくなった自分の手の中の物に、雷蔵が目を細めた。
握るそれをそのままに、ぐい、と雷蔵が体を伸ばす。
涙の零れそうな目の淵に少し吸いついた後、荒く息を漏らしている唇を塞いだ。
「ん、ぅ……ふ、はぁ…っ。」
ガブリと大きく口を開いて三郎の唇に噛みついたあと、開かれた口へと舌を侵入させその中を思う様蹂躙する。かと思えば、三郎と舌を絡めたまま口を離し、伸ばした舌で同じく雷蔵を追うように伸ばされた三郎の舌を絡め取る。
つぅ、と自分の口の端を唾液が零れるのが分かって、三郎の身体がぶるりと震えた。
それと同時に感じる、放たれた自分の精。
「んっんんーー!」
「ん……はぁ、はははっ、口づけでイったね。」
かわいい。と微笑んで雷蔵が涙の跡が残る頬へ唇を落とす。それに恥ずかしそうに顔を染める三郎にますます笑みを深め、腹に飛び散った白濁を指で掬いとった。
その感触に次にされることの想像がついて、三郎の肩がビクリと跳ねる。
それをあやすように今度は触れるだけの口づけを落とし、雷蔵の右手が三郎の双尻の狭間へと滑りこんだ。
クチ、と濡れた指を欲しがって収縮する自分の秘部に、三郎は堪らなく恥ずかしくなって思わず両腕で顔を隠してしまう。
その様すらも可愛くて愛おしくて、雷蔵は笑みを浮かべるのだが、その下にもっとかわいい表情があるのを知っている。なるべく優しい声で「ね、三郎。腕を外して。お前の顔が見たい。」と囁いた。
三郎は数瞬葛藤していた様子ではあったが、その声は魔法のように三郎の理性を壊す。ゆっくりと外された腕の中から現れた赤い顔と濡れた目に、雷蔵の笑みが映りこむ。
雷蔵の顔が見えて安心したのか、ほっと力の抜けた体にずっと後ろを擽っていた指がくちゅんっと音を立てて侵入された。
「っあ!あ…んゃぁっ」
「大丈夫。」
もう何度も体を繋げているのに、いつもこうやって初な反応をする三郎を雷蔵は大層気に入っていた。
恥ずかしそうに嫌々と首を振るその顔をもっと見たくて顔を近付ける。
その間も雷蔵の節ばった長い指は三郎の中を掻き回し本数を増やされ拡げらて、その感覚に体を震わせた。
「あ、あああっ!あ、ひぅっ、アアん!や、ら…ぞぉ!ああああ!!」
「…三郎。」
ずるりと指の引き抜かれる感覚に背を反らして、再び三郎が達してしまった。
はぁ、はぁ、と息を吐く三郎の両足を抱え、雷蔵が己のいきり立ったモノを解された三郎のそこへ押し当てる。
「三郎。」
いい?と尋ねる雷蔵の額から汗が一筋流れ、その目が欲情に光っているのが見える。
うっとりとその色に見惚れ、三郎がこくん、と頷いた。
それにまた雷蔵も泣きそうな顔で微笑み、勢いよく三郎の中へと侵入した。
「っあ、ぁんぁああ!っは、ア、らぃ、アアア!!」
雷蔵の名を呼びしがみ付くように背に手を回す三郎の額に小さく口づけながらも、雷蔵は深くまで侵入した自身を再び引き抜き、また勢いよく穿つ。
「ああああっ!!ひぁ、あっ、アァ!やぁ、おく…っ」
「これ?」
「あっ、やぁぁああ!!」
感じるところを抉られて三郎の目が大きく見開かれ、ビクビクと身体が快楽に震える。それを押さえつけるように雷蔵はその細い身体を抱きしめると、強く首筋へと吸いついた。
穿つ強さからすれば微かなものであるその感触にも三郎は震え、自分の首に吸いつく雷蔵の頭を愛おしそうに抱える。
温かい感触に目を閉じ、雷蔵の動きが激しくなる。
ビクンっとまた三郎の身体が大きく震え、三郎はぎゅっと手元にあった雷蔵の髪を掴んで、快楽に流される自分に悲鳴を上げた。
「ああああああああ!!!や、らいぞ、らいぞぉぉ!!」
雷蔵の名を呼びながら、三郎自身が震え二人の腹を汚す。
達した瞬間の締め付けに雷蔵も目を閉じながら、三郎のナカへ熱い飛沫を注ぎ込んだ。
ずるりと引き抜かれる感覚に「っは、ふ、」と色を含んだため息を吐いて、三郎は息を整えようと大きく息を吸い込んだ。
「…三郎。」
ようやく呼吸も落ち着き、雷蔵の手がそっと汗に濡れた三郎の髪を指先で避ける。
「三郎、気持ち良かった。ありがとう。」
あけすけな言葉にぱっと赤くなり顔を反らす三郎をくすくすと笑う声が聞こえる。悔し紛れに「どういたしまして!」と返しても赤い耳ではまったく迫力がない。
「……君はときどき性欲的になるね。」
赤い顔も治まってきた気がして隣で後始末をしている男に「なぜだい?」と問いかける。
雷蔵はちらりとこちらを見て、再び手を動かしながら一言。
「満月だから。」
と軽く言った。
「…………………………雷蔵。」
「なぁに。」
「君は狼男かとかおなごのように月のものでもあるまいにとか言いたいことは山ほどあるが。」
「うん。」
「今日は三日月だ。」
呆れた口調で言う三郎にあれぇ、そうか。と笑って返す雷蔵は答えるつもりなど無いのだろう。
すっかり拗ねた気持ちで三郎は布団を被り、寝る体勢に入ってしまった。
それを微笑み見つめながら雷蔵が「だってお前が好きだから、」と微かな声で言ったのを、三郎が聞いたのか聞いていないのか。
すぐに蝋燭を消してしまった雷蔵には分からなかった。
一度は色の戻った耳が再び朱に染まるのを。
知る由もない。
あとがき
エロリハビリってみた。半年ぶりくらいな気がするよ。
しかし甘!!起承転結ってなんですか。
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