りそうのおよめさん

※三郎がショタ化してます!!兵助は成人してます!!!苦手な方は注意!!!!





このところ雷蔵の脳裏にはある事柄が占められ、頭を悩ませていた。

それは見ている人も眉を顰めるくらいの悩みようで、普段迷うことはあっても悩むことの少ない彼を心配する人も少なくない。
そんな友人代表として、竹谷がコーヒーを片手に雷蔵の隣の席に座る。
「ありがとう。ハチ。」
「いいって。どうした雷蔵?このところ随分頭抱えてるみたいじゃないか。」
「うん……………。」
雷蔵は竹谷に貰ったカップを持ち、小さくため息を吐いた。
「三郎のことなんだけどね……………。」
「そうかがんばってくれ俺には何も出来なぐっ。」
「何言ってるのハチ…?今来たばかりじゃない?」
最初のさの字が聞こえた辺りで嫌な予感を覚えた竹谷は腰を上げるがそれを雷蔵が許すはずもなく。ネクタイを掴まれ動きを阻まれた。
しかも掴まれるだけではなくそのまま手綱でも操るように腰を元の通りに下ろさせ、話しを聞く体勢を作らされる。
(こえぇぇぇ…。)
「三郎のことなんだけどね。」
「はい。」
「最近困ってるんだ。」
「はぁ。」
「兵助にね、」
「じゃあ俺はこれでいででででで!!!」
「だからハチ。まだ話は終わってないってば。」
「俺に話は無い!!嫌だよその名前が出た時点で嫌な予感しかしねぇよ!!!」
今度は踏み出した足を思い切り踏まれ思わず涙目になる。
しかし目の前の友人はそれがどうしたと言わんばかりの笑顔で。
「いいから聞け。」
とのたまった。
竹谷は涙目になりながらもそれに逆らえず、元の通りに座る。
それを確認して、雷蔵は再び深いため息を吐いた。
「…この間のことなんだけどね。」


三郎は学校から帰ってきたら、雷蔵が返ってくるまで一人だ。
いわゆる鍵っ子というやつだが、三郎はそれで文句を言ったことなど一度も無い。
「雷蔵はいっしょにいるためにお仕事がんばってるんだもんな!!!」
と満面の笑みで言う三郎はむしろ抱きしめて放したくないほど愛らしかった。
だが雷蔵は仕事柄、夜も遅くなることが多い。大人の自分は多少不規則な時間で行動しても問題は無いが、まだ幼い三郎にそれは酷だ。


「だからね。兵助に僕が帰れない時に夕食の面倒をお願いしたんだ。」
そう言った途端吐かれたため息は、今までの比では無いほど深く。
なぜそんなことをしてしまったんだという思いでいっぱいであった。
竹谷も全く同感だ。


兵助は二人の同僚であるが、部署が違うためか比較的定時に帰られることが多い。
何度も家に遊びに行っているため、三郎とも顔見知りだしそれだけ考えれば適任ではあった。
「お願いしてもいいかな?」
「…………まぁ。構わない。」
最初微妙な顔をした兵助ではあったけれども、快く引き受けてくれた。


「とまぁここまではハチも知ってる経緯だと思うけど。」
「…………おう。」


雷蔵に頼まれた兵助は近くのスーパーで食材を買い、雷蔵たちの家へ向かっていた。
二人の住んでいるアパートは本来一人暮らしのための狭い部屋だ。
だが三郎はまだ幼く、雷蔵も現在引っ越すための貯蓄をしている最中である。そのスペースで十分な生活を送っていた。
少し古めかしいインターフォンを押すと、「はぁい」とまだ高い少年の声が聞こえる。
「三郎か?兵助だけど。」
「へーすけ!?」
名乗ったとたん嬉しそうな声と一緒にがちゃりと鍵の開く音がする。続いて少し開いた扉から、雷蔵そっくりの茶色の髪がひょっこりと覗いた。
「へーすけ!こんにちは!どうしたの?」
雷蔵はまだお仕事中だよ?と小首を傾げるその仕草に微笑んで、兵助は三郎の視点に合わせるように膝を屈めた。
「雷蔵から三郎のご飯作って、って頼まれたんだ。」
ガサガサと音を立てる袋を掲げて見せれば、三郎はまた満面の笑みを浮かべる。
「へーすけがご飯つくるの!?」
「うん。いや?」
「やじゃない!!」
入って入って!とはしゃいだ声で部屋へ通されて、兵助は目を見開いた。
「…三郎お片づけしてたのか?」
「うん。」
雷蔵とは学生の時からの長い付き合いだがここまで部屋が綺麗だったことはかつて無い。それはつまり、三郎が片づけたからに他ならないとすぐに兵助は悟った。
三郎は、まだ小さい体で照れたように縮こまりながら雷蔵ってばすぐ汚しちゃうから…と小さな声で呟いている。
兵助はその小さな体を衝動のままに抱きしめた。
「偉いな三郎。いい子だ。」
「……えへへっ。」
耳元で三郎が嬉しそうに笑ったのを聞いて、兵助は腰を上げた。
「じゃあ三郎が頑張ったなら、俺も頑張ってご飯作らないとな。」
「てつだう!」
「よしよし。」
会社の人間が見たら驚くような優しい笑みで兵助は三郎の頭を撫で台所に立つ。
持ってきたスーパーの袋から食材をとり、三郎でも出来そうな材料を道具と一緒に手渡した。
「三郎。このお豆腐を手で潰して、こっちのお肉と混ぜて?」
「分かった!!」
元気に頷く三郎にまた頭を撫でて、兵助も他の料理に取りかかる。
ときどき三郎に指示をして、手際よく料理は進んだ。
三郎はこうして料理の手伝いをするのは初めてではないらしく、この年の子にしてはとても手慣れていたのもある。
「三郎は料理上手なんだね。」
「だって雷蔵、見てないとお塩とかいっぱい入れようとするんだもん!!」
「…なるほど。」
大雑把な彼のことだから本当に料理は適当なのだろう。
ちなみに本日の料理。
豆腐ハンバーグにニンジングラッセ。モヤシの味噌汁、白いご飯である。
「いただきます。」
「いただきます!」
二人で揃って手を合わせ、不揃いなハンバーグ(三郎が丸めた)に箸を伸ばした。
「おいしー!」
「うん。上手く出来たな。」
顔をほころばせる三郎に兵助も頷き味噌汁を啜る。
そんな兵助をじぃっと見つめる視線に気が付き、「どうした?」と箸を下ろした。
「…へーすけ、ネクタイ外さないの?」
お家の中なのに。
と少し拗ねたような声で言われ、兵助は目を瞬かせたあと頷く。
「そうだな。おかしいよな。」
しゅるりと手を掛ければネクタイは簡単に外れ、それを見た三郎はぱっと席を立って兵助の横に立つ。
「ん?」
「はい!」
手を差し出すのでその上にネクタイを乗せると、てててっと走って壁にかけられたハンガーへと手を伸ばし、綺麗にそこへ引っ掛けた。
その姿を感心したように兵助が見つめているのに気が付き、三郎はまたえへへと笑う。
「……三郎はいいお嫁さんになるなぁ。」
「え!?ほ、ほんと!?」
「ほんと。」
「わたし…おとこのこだよ?それでも?」
「ああ。嫁に欲しいくらいだ。」
兵助の言葉に、ポンっと音がする勢いで三郎の顔が赤くなる。
その顔を隠すように自分の食事の席に戻るが、三郎は顔を隠すのに手を離せないらしい。
その様子を兵助は微笑ましく見つめていたが、このままでは食事が冷めてしまう。
「三郎。食べ終わったらお嫁さんのお仕事教えてあげようか。」
「え!!」
「だから、早く食べないと。」
にっこりと微笑めば三郎は赤い顔で目をぱちくりさせて大きく頷いた。


そこまで聞いて竹谷がげんなりと項垂れる。
「…………………あほか。あいつは。」
「本当にね。」
コーヒーを一口飲み、雷蔵もため息を吐いた。


で。どんなことを兵助が教えたかと言うと。
「いいか三郎。女の子は結婚したら相手の男の人のことを「あなた」って呼ぶけど。男の子は「旦那様」って呼ばないといけないんだ。」
「う、うん。」
「ほら。言ってごらん?」
「だ…だんなさま?」
「そうそう偉いね三郎。」
「えへへっ!ありがとうへーすけ!!」
などのような100パーセント趣味の発言である。


「それで?」
「もちろん兵助ぶん殴って二度と言わないって約束させたけど。」
「けど?」
「………三郎が…。」
「うん。」
「誰かのお嫁さんになりたいのは本当らしくて。」
深いため息を吐いている間、竹谷は固まったまま動けずにいた。
「………は?」
「…なんだか色々よくない方に勉強してるみたいなんだよね………。」
三郎は賢い。それにこの情報化社会と呼ばれる環境では、欲しい情報はすぐに手に入るだろう。
「このままじゃ意味も分からずに「ご飯にする?お風呂にする?それとも私?」とか言いだしかねないんだよ!!!」
そんなことあの可愛い三郎が言うなんて耐えられない!!!
頭を抱えてしまった雷蔵に竹谷はしばし考え、「よし。」と雷蔵の肩を叩いた。
「今日は早く上がれるな?そしたら三人で三郎に聞いてみよう。」
保護者のような三人から聞けば、三郎も話してくれるかもしれない。
その言葉に顔を青ざめさせた雷蔵がこくりと頷いた。


「ただいまー。」
「雷蔵お帰り!!あ!ハチ!!!いらっしゃい!!!」
「よう。久しぶり三郎。」
「久しぶりー。」
ほにゃっとした笑顔で竹谷を見上げる三郎は、竹谷から見れば以前に会ったときとまったく変わった様子はない。
ただ大人二人の間をパタパタと元気よく走り回っていた。
「どうしたのっ?今日はなんでハチがいるの?」
「あとで兵助も来るぞ。」
「へーすけも?」
兵助はまだ少し仕事があるとかで後で来ることになったのだ。
きょとんと三郎が首を傾げるのに頷いて、竹谷は台所に立つ雷蔵の横に立つ。
雷蔵に小声で「別にいつもと変わらなくないか?」と言うも雷蔵は黙って首を振った。
じっと心配そうに三郎を見つめる姿はどこか哀愁が漂っている。
その時。
キンコーンとチャイムが鳴った。
「兵助かな?」
「あ!私出る!!!」
三郎がテテテッと走ってドアを開けると、そこには予想通りの男の姿。
「お。三郎。」
「へーすけ!!」
ぱっと三郎の顔が明るくなる。
竹谷は突然体が冷えていくのを感じて、その正体を探ろうと周囲をみるとすぐ隣から禍々しいオーラを出した友人に行きあたってしまった。
それに気づかず兵助は三郎に招かれるままに部屋に入る。
鞄を床に置き、靴を脱いだところでふと兵助が動きを止めた。
「三郎?」
「えっと、えっとねへーすけ?」
兵助の前でもじもじと三郎が体を揺らしている。
その様は大変可愛らしいのだが、今の竹谷には嫌な予感しかしない。
「どうした?」
「えっと…『ご飯にする?お風呂にする?それともわた』」
「さぶろおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
突然の雷蔵の大声に驚いた三郎が口を止める。雷蔵は烈火の勢いでその小さな体を抱きしめながら「どこで覚えたのそんなの!?」と震える声で問い詰めた。
「て、てれびだよ。」
「なんで兵助に言うの!?」
「え………。」
必死な様子の雷蔵に目を白黒させながらも、三郎はその質問にかぁぁぁと顔を赤く染める。
逆に雷蔵の顔からはどんどん血の気が下がっていく。
「………………へいすけ。」
「はっ、はい!!」
「ちょっと外に行こうか。」
嫌だと言う前に首根っこを掴まれている。兵助は悲鳴を上げる間もなすすべもなく外へ連れ出されていった。
「……はちぃ。」
「ん?」
「雷蔵とへーすけどうしたの?」
「んー。男同士の語り合いをしに行ったんだよ。」
一方通行の(拳の)語り合いかもしれないが。
三郎はそれを聞いてしょんぼりとした様子で俯いた。
「三郎はなんで兵助が好きなんだ?」
その言葉に三郎がきょとんとしている。
よく分かっていないらしいので、竹谷は苦笑して言いなおした。
「なんで兵助にお嫁さんの勉強教えてもらおうとしたんだ?」
「ふぇ…?だって、兵助もお嫁さんなんでしょう?」
竹谷は本日何度目か分からない凍結状態に陥った。
それでも固まる口や頭をかろうじて動かし、「なに?」とだけ口にする。
「だってへーすけ、キレイだし、おりょうり上手だし、やさしいし、いろいろ知ってるし……………ちがうの?」
「それで…だから、あー…三郎は?」
「へーすけみたいなお嫁さんになりたいんだわたし!!」
と満面の笑みで言われてしまっては、これ以上竹谷は何も言うことは出来ず。
外から悲鳴が上がらないことに逆に恐怖を覚えながら勘違いした友人たちにエールを送ったのだった。

あとがき
お粗末でした!!!
三郎はともかくやましい気持ちがあるのは本当なので言い訳しない久々知氏(笑)
むしろこの拳を乗り越えれば三郎は俺のもの!!待ってろ三郎!!!てな感じです。
報われないけどwwww


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