変装名人被ったを見る。



私がいつも姿を模す彼は、いつも穏やかに笑っている。

後輩にも慕われ、同級にも彼を憎む者は一人もいない。それだけで人格の良さが窺えるというものだ。
そんな人の良い人間というのは他にも二、三人思い当たらないでもないが、私はその中でも彼が群を抜いて善人であると思う。
たとえば、私が迂闊にも転んでしまった時は、笑わずに手を差し伸べてくれる。
たとえば、私が使いから帰って疲れているとき、「お疲れ様。」とあの笑顔で迎えてくれる。
たとえば、演習中に怪我をした時などは誰よりも早く私の手を掴んで医務室へ連れて行こうとする。
思い出せばキリが無いが、これで彼がどれだけ良い人間か分かってもらえたと思う。
だから、こんな状況に私が居るのは、私が悪いから以外の理由など何一つとしてないのだ。


背中は固い床に押し当てられ、起き上がろうにも両手は彼によって抑えつけられている。
こんな状況は。


私は必死で彼がこんな行動に出る要因を探すが、まったく思い当たる節がない。
朝は、普通だった。
いつも通り私が先に起き、雷蔵を起こす。そしたら彼は眩しそうな笑顔で「おはよう」というから、私も「おはよう」と返した。二人で着替えをすませるが、これも私の方が早い。
何を迷っているのかは知らないけれど、雷蔵はいつも困ったように私を見つめて手を止めてしまうのだ。だから、「雷蔵、手。」と笑って指摘する。そうしたら雷蔵は照れているのか赤い顔をして慌てて着替えるんだ。
午前の授業も、何も無かったと思う。
教科の授業だったから、私はいつも通り雷蔵の右側に座って同じ姿勢で授業を受けていた。
時折当てられて答えられない時は、そっと紙の端に答えを書いて助けてやったり。私が授業に飽きて居眠りしてしまった時は雷蔵が陰になってかばってくれたり。
やはりいつもと変わらない。
昼は、いつも通りハチたちと一緒に食べた。
また兵助が豆腐を食べているからハチとそれをからかって、呆れながら雷蔵がそれを止めて、兵助がキレる直前で抑えられる。
そんないつもの繰り返しだったはずだ。
午後の実技の授業はどうだったか。
今日は先生たちの仕掛けた罠を避けつつゴールへ向かうというものだった。
もちろん私は雷蔵と乗り切ったが、そこで何かしただろうか?
何度か雷蔵が罠にかかってしまいそうな時は手を差し伸べて助け起こした。その時の照れくさそうな笑顔に、私の顔も思わず緩んでしまって、実習中だというのに浮かれた気分になってしまった。
それだろうか?
しかし、普段も行っていることで、雷蔵もゴールした後も特に様子は変わっていなかった。
では夕飯の時だろうか?
昼と同じメンバーで取る夕食では、今度はハチをいじり倒していたが、そこでも雷蔵はいつも通りだった。
風呂は、どうだっただろう。
大雑把な雷蔵はぱぱっと服を脱いで適当に畳み、すぐに風呂に入ってしまうが、私はいつもそれを畳んでから同じように入っていた。
そうすると、頭を洗うのが先か、身体を洗うのが先か悩んでいる雷蔵と同じタイミングで湯船につかることになるのだ。
風呂で私の変装を解くことは無いが、そんなことはもう学園中の誰もが知っていることだ。
私は邪魔されることなくゆっくり長めに湯につかるのだが、いつも雷蔵は「ごめん、上せそうだから先に上がるね。」と少し赤くなった顔で先に出る。
そんなに上せるならもう少し早く出ればいいのに。といつも言うのだが、雷蔵は苦笑するばかりだ。これも癖なのかもしれない。
ともあれ、雷蔵が居なくなった風呂に私はそんなに長居はしない。雷蔵の後を追うように上がると、だらしなく夜着を来た雷蔵は置かれた椅子に座って涼んでいた。
「雷蔵。大丈夫か?」
「あ、う、うん。」
そう答える雷蔵の顔は、風呂の中で見たより赤くなっているようだ。私はなんとなく顔をしかめてさっさと夜着に着替え、いまだ座ったままの雷蔵に向き直った。
「雷蔵。具合が悪いならそう言え。」
「え…?あ、いや。本当に具合が悪いわけではないんだ。ただ上せてるだけだよ。」
「…本当か?」
「うん。本当。」
「なら、良いんだが…。」
「さっ三郎!?」
私はすっかり熱くなってしまっている雷蔵の手を取って、自分の頬に持っていった。
「…心配するから、無理はするなよ?」
「………。」
驚いた顔で固まってしまっている雷蔵にそっと笑って、私はその手を引いて部屋に戻ったのだ。


駄目だ。やっぱり怒らせた要因が分からない。
混乱する頭でただ雷蔵を見上げる私を、別人のような彼が熱の籠もった目で見下ろす。
「ら、らいぞ?」
「三郎。僕もう限界だよ。」
いつも柔和な笑顔を浮かべている彼の真剣な眼差しと表情に、胸を突かれる。どうしたというのだろう。こんな、常の自分を投げ出させてしまうほど、私は雷蔵を怒らせたのだろうか?
私の上で馬乗りになった雷蔵が、ゆっくりと上体を倒してくる。近づく気配に目をつぶると、首に熱い吐息を感じる。そして、続けてちゅ、と唇の触れる音。
「ひぅっ!」
触れる肌がくすぐったくて思わず身を竦める。首元で、雷蔵がふっと笑う気配がした。
「ら、雷蔵、何?んんっ。」
べろりと首筋を濡れたものが触れていった。私を味わうようにそれはゆっくりと首筋を上下になぞり、ついには耳へと辿りつく。ぴちゃり、と濡れた音が私の耳を侵した。
「ふぁ!や、雷蔵!!それ、やだっ!」
「…三郎。」
「ひ!」
耳元で聞こえる雷蔵の常より低い声に体が震えた。いつも耳元で話してもこんなことにはならないのに。ぞくぞくと何かが背中を這いまわる。
「…三郎。三郎。」
「やっ、雷蔵ぉ、そんな、よばな、でっ。」
呼ばれる度に背筋が震える。ただ、名前を呼ばれているだけなのに。
「ふっぅ、らいぞ、なんで…。」
こんなこと初めてで、怖くて雷蔵を呼ぶけれど雷蔵はかまわず私の夜着を肌蹴させた。ひやりと肌を刺す空気に体を震わせると、雷蔵の暖かい手がそっと体を撫でてくれ
る。

泡立つ肌がそれによってほっと治まる。しかし、雷蔵が私の胸の突起に触れた途端またぶわりと震えた。
「あぁん!や、やだ!らいぞ、あ、そこ、ゃだ、やだぁ!!」
「三郎。」
相変わらず熱に浮かされたような雷蔵の声。私は息を荒くしながら雷蔵を見下ろすが、視界に入った光景に慌てて顔を逸らした。
赤く色づいた胸の突起を、雷蔵の綺麗な手が弄り、もう片方は今にも触れそうな程に雷蔵が顔を近づけている。
「あ、あああ!」
ふ、と吐息をそこに感じた時、起こる快感に身構えていながら堪え切れず私は悲鳴のような嬌声を上げてしまった。
じゅぷ、ぴちゃと卑猥な音がする。どこからその音がするのか明確に理解して、私は顔から火を出せそうな程赤面した。せめて、と口から上がる嬌声を抑えられるように手を噛み快楽を堪えようとする。
「…三郎。駄目だよ。声、抑えないで。」
「で、でも!」
「駄目。」
断罪するような声に、泣きそうになる。しかし、雷蔵に逆らえない私は口から手を外し、代わりに目を瞑ってぎゅうと肌蹴た自分の夜着を握りしめた。
「…良い子だね。」
「ら、らいぞ、ふああ!」
そっと髪を撫ぜる感触がして期待と共に目を開く。しかし、私を襲ったのは先ほどよりも明確で、強烈な快感だった。
「あ、あ!ぃあ、やぁ!ああん!ら、ぃぞ、ああああん!」
「もう起ってる。…やっぱり感じやすいんだね。三郎。」
「ふぁあん!あ、ぁアっ!」
下穿きがいつの間にか剥がされ、自身を直接握られる。そのままグチグチとしごかれ、上がる声を抑えられない。
「三郎…気持ちいい?」
「ああン!ひ、ア、やぁ!らいぞ、らいぞぉ!!」
「…じゃあ、これは?」
「ぁ?あ、あああああああン!!」
自身が濡れた感触に覆われる。手で触れられる以上の快楽は私の意識を掻きまわし、散らせる。過ぎた快楽に目からは涙が零れ、口から零れるものを止めることも出来ずただ喘いでいた。
必死に手を伸ばすと、指先に柔らかい感触が触れる。必死にそれに縋りついて離そうとするが、雷蔵は何の抵抗も感じていないかのように口内で私自身を嬲り続けた。
「ひっ、うぅ、ああ、ア、あ!だめ!だめ、らいぞ、でちゃ、」
「…だしなよ。」
「ひゃあん!?あ、あ、ああああぁア!」
じゅ、と強く吸われ、射精を堪え切れず背を仰け反らせた。ビクリ、ビクリと体が痙攣した後、ぐったりと弛緩したように力が抜ける。

「は、ぁ、らいぞ…。」
荒い息を吐きながら、混乱する頭で私は雷蔵の姿を求めた。
あても無く手を彷徨わると、そっとそれを取られる。そのことに安心して、ほぅと息を吐いた。それを見ていたのだろう、雷蔵が私の手を握り、その甲にそっと口づけを落とす。
「ごめんね、三郎。」
「ん…雷蔵、もう怒ってないか?」
視線を下に向けると、雷蔵が目尻を下げた情けない顔で私を見つめていた。私の言葉に目を瞬かせて首を横に振り、そっと優しく私の頬を撫でる。
その手がいつもの雷蔵のものであることが嬉しくて、甘えるように顔をそれに擦り付ける。それを見た雷蔵の顔がまた一瞬怖くなった気がしたけれど、再び見上げたときはもう元の顔に戻っていた。
「…僕が怒ってると思ったの?」
「違うのか?」
「違うよ。君が好き過ぎて、堪え切れなかったんだ。」
その言葉の意味が分からなくて、思わずきょとんとなる。
「…好き?」
「うん。」
「私だって雷蔵のこと好きだ。」
「うん…知ってる。でも、三郎は、こういうこと、したいと思わなかっただろう?」
そして再び首に落ちる感触に「んっ。」と体が震えた。
「…僕は三郎とこうしたくてたまらなかった。ずっと前から。」
「雷蔵?」「今日は、一段と可愛くて、愛おしくて、堪え切れなかったんだ。こんな…無理にするつもりは無かったのに。」
「…雷蔵。」
首に顔を埋めている雷蔵の表情は見えない。でも、今は辛そうな顔をしているのだろうということは分かる。
だから、私はそっとその頭を撫でてやった。
「雷蔵。私は、雷蔵になら何されてもいいと思っているよ。」
「…でも、君を汚してしまった。こんなに、三郎はこんなに綺麗なのに。」
「私は綺麗なんかじゃないが…。雷蔵の方がずっと綺麗だと思うけどな。」
「それは僕が君の前じゃ猫を被ってたからだよ。」
「そうなのか?」
それは初耳だった。驚きが声にも出てしまって、雷蔵はふふ、と笑う。
「僕は、君が思うほど良い人間じゃない。僕は三郎にだけ優しくしていただけだよ。」
「……………。」
「三郎?呆れた?」
返事が無くなった私を、雷蔵がようやく顔を上げて見つめた。
その顔が驚きに染まっていくのを見ながら、ああやはり自分は今相当情けない顔をしているに違い無いと確信する。
「…三郎。顔、」
「言うな。何も言うな。」
「真っ赤だよ。」
「言うなってば!」
ああ言われる前に思い当たる節は山程あったのに!
今までの雷蔵の行動を思い返せば、その優しさのベクトルは真っ先に自分に向いていたことは明白だ。
嬉しい。なんて。
そんな言葉ばかりが頭を駆け巡って、私は目の前の体を思い切り抱きしめた。
「さ、三郎!?」
「雷蔵、好き。大好き。」
「三郎…。」
そっと頭を撫でてくれる感触が気持ちいい。
そのままぎゅう、としがみ付く私を雷蔵は本当に愛おしそうに撫でてくれる。その感触にほぅ、と安心して「雷蔵、好き。」ともう一度囁いた。
「三郎…、え?」
「わたしも、する。」
ぐるり、と私の上に居た雷蔵と体制を入れ替える。雷蔵は目を白黒させて私を見上げるが、かまわずに私は雷蔵の下穿きの辺りをそっと手で探った。
熱くなっているそこをきゅうと握ると、雷蔵が「んっ。」と小さく呻く。
それににこりと笑って、私はさっき自分がされたように下穿きを剥ぎ取った。
「さ、三郎!?」
「私も、雷蔵にする。」
「いや、あの。ん。」
戸惑った声を上げる雷蔵に小さく口づけを落として、私は体を下へずらしていく。目の前にそそり立った雷蔵自身に、ごくり、と唾を飲んだ。
「ん、う…。」
初めての行為に戸惑いながらぺろり、とまずは舌先で先端を嘗めてみる。すでに先走りの滲んでいるそこは少し苦い。だが、それが最高の媚薬であるようにその味に舌がしびれた。
ぺろりぺろりと舌を使って先端だけでなく竿や袋も嘗めまわす。
ハ、と荒い息を吐きながら私は夢中で雷蔵のものを愛した。

ときどき呻きながら、雷蔵は感じてくれているようでビクリと大きくなるそれにうっとりと微笑む。
「っさぶろ…。」
雷蔵が私の名を呼ぶので、今度はぱくり、と雷蔵自身を咥えみる。
再び、口の中で雷蔵がビクリ、と震える。
じゅぷ、じゅる、と卑猥な音が私の口から響く。涎が口から垂れるのもかまわずに私は口内に迎えた雷蔵を愛で続けた。
じゅ、と一際強く吸うと、雷蔵が一際大きく震えた
と、突然私の肩に手を掛けられ、いつの間にか上半身を起こしていた雷蔵が私を押し倒している。
「…らいぞ?」
「君ってやつは…。」
熱の籠もった、ぎらぎらした目の雷蔵が私を見下ろしている。その瞳に映る私は涎や雷蔵の先走りで濡れた唇をぽかんと開け、とても間の抜けた顔だった。
しかしそんな私に、雷蔵はたまらずといった様子で口づける。
「んっ、んぅ、ふっ。」
雷蔵の舌が、私の口内を思い切り嬲る。舌を捕えて絡ませ、上顎を舌先でなぞり、歯列もそっと撫でられる。そのどの動きにもびくびく震えて快楽を拾う私は、もう雷蔵専用の人形のようだ。
甘い唾液を流しこまれそれを飲みこんで、ようやく雷蔵が口を離した。
ツウ、と私と雷蔵の唇を繋げる唾液の糸に私は微笑んだ。
私と雷蔵を繋げるものならば、どんなものも嬉しい。
しかし雷蔵は顔を赤くして私を抱きしめ、再び私の肩口に顔を埋めた。
雷蔵の顔が見られなくて残念だなぁ。なんて考えながらそっとその大好きな背中に手を回す。
それにまた雷蔵は体を震わせた。それを宥めるように撫でると、雷蔵もそっと私の背へ手を回してくれる。
「…ん。」
優しく撫でてくれる手がくすぐったくて、声を震わせた。
雷蔵の長い指はすうと背を辿り、やがて私の双尻へ手を伸ばす。
「雷蔵?」
「…三郎。好きだよ。」
耳元でささやかれる言葉にうっとりと目を閉じると、突然、雷蔵の指が私のあらぬ場所へ突きたてられた。
「ひっ、いっ…ああ!!」
「ごめん。三郎。」
体を離した雷蔵が、再び私に口づけ、それから体をずらして下半身に顔を埋める。今度は先ほどよりももっと下、今雷蔵の指が突き立てられている私の双尻へと視線が注がれた。
「やぁ!ら、らいぞ、そこ、きたなっ」
「汚くない。」
さすがにそこは見られるのも恥ずかしく私は必死に手で隠そうとするけれど、あっさりとその手を取られしまい、あろうことか雷蔵はグチグチと指の埋められているそこへ舌を伸ばした。
「ひ、きゃあああ!!」
ぴちゃり、と音がして舌がそこに触れる。
唾液を流し込もうとしているのか、尖らせた舌先がぐいぐいと私の中へ侵入するのがわかる。だがその度に私は首を振って喘ぐことしかできず気が狂いそうになる。
「ん、あ、あぁ!や、やだ、らいぞ、あ、やだってばぁ!!」
「待って…もう少し…。」
「ひ、ぁぅ、あ!?」
流し込まれた唾液に、滑りが良くなった雷蔵の指が私のナカのある一点に触れた途端、私の背中を何かが走りぬけた。
「三郎。ここ?」
「あ!アア、あああああああん!!」
嬉しそうな雷蔵の声に答えるほどの余裕も無い。ただ今まで感じたことの無い快楽に焦点の合わない目で言葉にならない悲鳴を上げる。
「ひっ、ひぁあ!きゃあぅ!あぁ、アァア!」
ぐちゅぐちゅといまだ出したことの無い音を立てる私の体にひどく混乱する。私自身はとうに限界を迎えていて、壊れたかのようにひたすら白濁を零し続ける。
そこを弄る指はやがて一本が二本に、二本が三本にと増えていき、その度に比例して増える快楽に私は必死に雷蔵に縋りついた。
「三郎…。かわいい。」
「あ、あああ!ら、らいぞぉ!らい、ぞぉ!」
ちゅ、と私のこめかみに雷蔵の唇が落とされる。そしてくちゅん、と卑猥な音をさせてようやく指が抜かれた。
それでも私の体はいまだ強烈な快感にヒクヒク震えている。そんな私の足を抱え、雷蔵が私に覆いかぶさってくる。
「三郎。好きだよ。」
「あ、わ、わたしも、すきぃ。」
大好きな雷蔵に手を伸ばす。雷蔵は私の好きなように手を背中に回させると、再び小さく口づけを落とした。
先ほどまで指でいじられたところに、熱いものが押し当てられる。
「?雷蔵…あ!ああああああ!!!」
「ふっ、さぶろう…。」
指とは比べ物にならない大きなものが私の中に入ってくる。縋りつくように雷蔵にしがみ付いたまま、私は背中を仰け反らせた。
それは最奥まで入ってくると一度止まり、まるで慣らすかのようにぐるりと動く。
「あああ!は、く、くるし…。」
「三郎…三郎、ごめん。痛くない?」
「ら、いぞ?」
雷蔵の心配そうな言葉にただこくこくと頷くと、雷蔵は蕩けるような笑顔を浮かべた。
「よかった…。わかる?僕が、君の中に入ってる。」
「あ…これ、らいぞう?」
「そうだよ。」
ぐちゅん、と再び奥を穿たれる。「あぅ!」と声を上げる私に、雷蔵は優しく口づけを落としてくれた。
「三郎の中、すごく気持ちがいい…。動いていい?」
「あ…。」
そういって雷蔵がとても嬉しそうに微笑むものだから、私は深く考えることなく頷いた。
その途端、ゆっくりと抜かれるように雷蔵自身が私の中を擦りあげる。
「あ…あ、あぁ……ひゃあん!!」
ぎりぎりまで抜けたところで、今度は思い切り中を突き上げられた。
その衝撃に声を上げるが、雷蔵はそんな私に何度も口づけを落としながらも動くことを止めない。ぐちゅぐちゅと激しく音と立てながら突きたてられ、私はただ強い快感に涙を流し口から涎が流れるのも止められぬまま鳴き声を上げるのみだった。
そんな私を、雷蔵の暖かい手が愛おしそうに撫でてくれる。
「あ!あああ!あぅ、ああああ!!」
「んっ。」
雷蔵の動きが突然止まり、小さく呻く。私の奥に熱い液体が注ぎ込まれ、私は息を荒くしたままそれを感じていた――。


ぐったりと弛緩したように動かない私の体を、雷蔵が手ぬぐいで拭いてくれている。
最初は自分ですると言ったのだけれど、私は体を起こすこともままならず雷蔵はそんな私に口づけを一つ落として「僕にさせて」と綺麗な笑みで言ったのだ。
その笑みに、私がとても弱いことを彼は知っているのだろうか?
そんなこんなで私の体を清め続ける雷蔵の顔はとてもご機嫌である。ときどき悪戯をするように肌をくすぐって、ヒクリと震える私の反応見ては笑っている。熱を持たない程度に遊びながら私の体を撫ぜる様子はとても嬉しそうだ。
「…雷蔵?」
「ん?なに?三郎。」
「…随分ご機嫌だな…。」
多少の呆れも含めて言うと、雷蔵はきょとんとした後満面の笑みで頷く。
「当たり前じゃないか。こうして、君が僕の傍に居てくれるのだもの。」
「…今までだって傍にいただろう?」
「うん。でも、三郎はもう僕が猫を被っていてもいなくても、傍に居てくれるんだろう?」
「当たり前だ。私は雷蔵が好きなんだから。」
「うん。僕も三郎が好き。だから…。」
雷蔵が言葉を切って顔を埋めた首筋にチリ、と痛みを感じる。しかしすぐに解放されると、そっとその痕をくすぐられた。
「ら、雷蔵?」
「だから、他の誰にも触らせてはいけないよ?」
目の前で笑む顔は、今まで見たこと無いもので。
それはまるで獲物を喰らう前の獣の笑みだ。
常の雷蔵では見ることの無いその笑みに、私は光悦と頷いた。


あとがき
雷蔵は狼。
なら三郎は兎か!!←
うっとりしてる兎さんに狼さんがもっかいムラッとしてるといい。

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