鬼ごっこ

※「話シリーズ」とは違う暴君です。優しくないです。無理やり描写があります。
それでもOKという方はどうぞ↓





























ドドドドドドドドド
「なんだ?」
教室にいる竹谷の耳に、忍術学園では割と聞くことの少ない音が響いた。
そして、大体この音がするときは…。
「1年は組か、3年の迷子組か…。」
上級生はもう足音を消す習慣がついているため、こんな足音を響かせることは少ない。が、しかし…。例外が無い訳ではない。
徐々に近づいてくる足音に、竹谷は立ち上がり教室の戸を開ける。ひょいと顔を出して覗いてみると、近づいてくる制服の色は藍。
(やっぱりな…。)
「よぉさぶろ…、」
びゅんっ
びゅんっ
のんびりと挨拶する竹谷の目の前を二陣の風が通り過ぎる。
「…ありゃぁ…六年か。三郎の奴、今度は何やらかしたんだ?」
上級生相手にまで悪戯の手を伸ばす三郎に呆れつつ、竹谷は教室に戻った。もちろん助けることなんてしない。
あの様子ではもう今日出た宿題は終わっているのだろう。羨ましい話だ。


は、は、と短く荒い息が耳触りだ。

強制的に動かされ続けている足はそろそろ限界に近い。
「はーちや!もう諦めろってー!」
「!!!」
絶対嫌だ!!!!
勉強する雷蔵の邪魔をしてはいけないと散歩していたらこれだ。「暇か?暇だな!じゃあ私と鬼ごっこをしよう!捕まったらいうこと聞けよ?」だと?ふざけんな!!この暴君!!
などと言い返す暇も無く追いかけられ続けてはや二刻。
体力も気力も限界に近付いているというに、後ろの小平太は息も乱さず笑顔で付かず離れずの距離を保っている。
これでは、何かで騙し打ちをして隠れる暇も無い。そんな間は与えてもらえない。
(ただ一つの隙でもあれば逃げられるのに…っ。)
三郎とて体力はあるほうなのに、この無尽蔵の体力馬鹿の空気読まずの暴君はそれを上回る。
「んー…。飽きた!!」
「な!?」
突然ぐいと思い切り身体を後ろに引っ張られる。すでに力の抜けている足はそれに抵抗することも出来ず、引かれるままに身体ごと後ろに倒された。
しかし、そのまま地面に倒れてしまうかと思えた身体は、固く、力強いものに支えられ止められる。
はぁ、はぁ、荒い息のまま三郎の身体を支える相手を見上げる。
楽しそうな笑顔は変わらず、憎たらしいほどに晴れやかだ。こちらは酸欠で頭がくらくらしそうだというのに汗一つかいていない。
「必死で逃げる鉢屋も見ていて楽しかったがな!やはり追い続けるというのは私には合わん!」
「そうか…そうですか。」
思わず素が出そうになるのを慌てて修正する。そこまで気力も削がれているのかと思うとこの顔を殴りたくなる。…それをしてもきっと止められて終りだ。そこまで無駄な体力は残っていない。
一方小平太は三郎の睨む目を見て笑みを深めながら、その細い身体を抱き寄せた。
大人しく腕の中に収まる三郎に軽く目を見張る。体力を限界ギリギリまで削った姿は、いつも飄々としているこの後輩にしては珍しいことだ。
顔を寄せた首筋から、ふわりと甘い香りが鼻を掠める。
「鉢屋、良い匂いだな。」
「は?んっ。」
その香りの根源を探るように首筋に鼻を埋める。邪魔な制服の襟首をグイと引っ張り無理やり肌蹴させれば、ますます香りが濃くなって小平太に届く。
「せ、せんぱ…、ひぅっ!?」
「…甘いな。」
「ひっ、や!」
高まる香りに堪え切れず、べロリと汗の滲む首筋を舌で舐め上げる。しょっぱいはずのそれが、小平太の舌にはひどく甘く感じた。
腕の仲で三郎が暴れ出す。しかし、先ほどよりは回復しているとはいえ身体を拘束する小平太の腕力に叶う訳も無い。
小平太は子猫が手の中でじゃれているような愛しさを感じて微笑む。
それと同時に腹に起こる飢餓感。
「…腹が減った。」
「はぁ!?」
「鉢屋がいい匂いさせるから、腹が減ってきた…。」
ぐっ、と三郎を抱きしめる腕にさらに力が込められる。
「お、お腹が空いたのなら食堂に行けばいいでしょう!?」
「腹は減って無いよ。」
「は!?先輩ふざけるのもいいかげんにっ…」
矛盾する物言いに目を吊り上げた三郎が声を荒げて小平太の方へ顔を向けた。しかし、途端その目に射すくめられる。
ぎらぎらした、飢えた獣のような瞳が。
三郎を射ぬく。
「せ…先輩?」
「…なぁ、鉢屋。腹が減ったんだ。だから…。」


「お前、食わせてもらうぞ。」



「ひ、いっああああ!」
「はっ、はは!」
闇の中で三郎の白い背がうねる。小平太がそれを上から眺めながら楽しそうに笑う。
ズッと自身を三郎の奥深くまで沈めながら、跳ねる白い背に唇を寄せた。
べろり、と濡れたその背を嘗める。その度にビクリと震える身体と内壁を楽しむように動けば、三郎は「やああ!!」と涙の混じった声で艶やかに鳴いた。
その声に、また小平太自身が大きくなる。
「…っかわいいな鉢屋。」
「ひぅっ!!ああぅン、や、は、アアァア!!」
涙を流して乱れる三郎は普段の姿からはかけ離れ過ぎていて、別人のようだ。
グチグチと濡れた音が部屋に響く。
薄暗い部屋には戸の隙間から光が漏れていて、それがまだ日が高いことを知らしめていて。それすらも、とても卑猥だ。
三郎はただ与えられる快楽に啼きよがり、小平太はその淫靡な光景にさらに熱を高める。
「はははっ。鉢屋ぁ、お前、思ったよりいい具合じゃないか。」
「は、うぅ、ああ!」
「ほら、もう出すぞ。しっかり受け取れ。」
「いっああああああああ!!!」
「っは…………。」
ドロリとした熱い液体が七松から破裂する。三郎のナカに、広がる。
「は、あ…あ………あぁ………。」
三郎は目を見開き、ただそれを受け入れることを強要されることに涙を零した。
体は意識せずに震え、力が入らない。
うつ伏せに倒れる三郎に、素早く身支度を終えた小平太は楽しそうに笑って、その耳に口を寄せる。
「     。」
「?」
その声が聞き取れず三郎は疑問符を顔に浮かべながら背後の小平太を見上げる。
その顔は逆光で陰り、よく見えない。
ただ。
光の中に一瞬見えた笑みは。


ひとでなしの、顔だった。


あとがき
人間として優しくて強い暴君も好きですが、こんな理不尽な暴君も大好きです。
ということを追求してみた。
「」の中はお好きな想像をお楽しみください。

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