だって君が好きだから!
噂はただの噂であるが、疑惑にもなりえるし、真実なのかもしれない。
噂の真偽は本人にしかわからないだろう。
「三郎、今日くっつきすぎ。あっついんだけど」
「うるさい兵助死ね」
もう自分にプライドとかなんとかそんなものはなかった。
私のクラスメイトが言っていた。兵助が昨日、駅前で兵助のクラスの内藤さんと腕を組んで歩いていた、と。
兵助は私にゾッコンだ。そんなことは有り得ない。
しかし、別の、私のクラスメイトからも同じことを言われてしまった。
ははは、ありえないそんなの。
なんて、強がって。
最初言われた時でさえ内心ビクビクして不安だったのに、二回も言われてしまって。
兵助の腕を組んでいいのは、私だけなのに。
確かに昨日は兵助とは別行動だった。
私自身生徒会の仕事があって、一人じゃできないから勘右衛門と立花先輩に手伝ってもらって、それでも本当に時間がかかりそうだったので、兵助には先に帰ってもらったのだ。
先に帰れとメールして、わかったと返信が来た。
そのあと兵助に二度ほどメールを出していたが、いずれも返信はなかった。
だから余計に不安なのである。
内藤さんは学校でも有名な美女で、成績もよくてスタイルもよくて性格もよくて。男子からももちろん人気があるし、女の子からもあこがれの的である。私も、内藤さんにはあこがれている。
だから余計に、もっと余計に心配なのだ。
その話を聞いた昼休み、お弁当を食べ終わると速攻で兵助のクラスに向かった。
自分の座席に座って本を読んでいる兵助の手をどかし、兵助のひざに横向きで座って、ギューッと首に抱きついた。
最初は兵助も驚いていたが、今ではもう文句しか出てこない。
クラスの子に浮気されちゃったねと言われるのが悔しくて。
その瞬間も兵助は内藤さんと同じ空間にいると思うと悔しくて。
こんなにも不安になってしまう自分が悔しくて。
兵助は持っていた本を机に置いて、諦めたようにため息をついた。
諦めたって、いうか、呆れたというか。
そんなかんじの、ため息。
そんなものを聞いてしまうと、今の自分は兵助にとって邪魔だしめんどくさい存在だろうと思うと、目が涙で滲んでしまった。
でも、悔しくても、切なくても、
今以上に兵助に嫌われたくなくて、抱きついていた腕を解き、兵助の膝から降りた。
「三郎、どうしたんだよ、本当」
兵助は私の腕をギュっと掴んで、心配そうに見上げてくる。
心配そうな顔。
でも、この顔、演技だったらどうしよう。
そう思うと、私の目からは溢れんばかりの涙で、視界が滲む。
「私、兵助のことすごく好き!!」
泣きそうな顔でようやく出てきた言葉は、普段めったに聞けない言葉だった。
先ほど本を読んでいると、突然現れた三郎は俺の読書を妨げるようにひざに座って抱きついてきた。
何を聞いても答えない三郎に少しめんどくささを感じつつ、汗で滲んでいる項や汗で透けている下着に戸惑っていた。
クラスではクールな久々知君で通っているからというわけではないが、さすがに三郎のこんな姿を見て興奮しないわけないし、なんだかんだで三郎は男子に人気があるから、こんなエロい姿、誰にも見せたくなかった。
しかし当の本人は何があったのか全く喋らず、ただずっと俺に抱きついていた。
ようやくひざから降りたかと思えば、今にも泣きだしそうな顔をしているし、逃げないようにと三郎の細い腕を掴んでどうしたか問うが何も言わないし。
しかしこんなにも不安な顔をしているのだから、何かあったか何か言われたことには間違いないし、そうでもなけでば学校でベタベタしてくることもないし。
そして、好きだと言う言葉が、三郎の口から出てくる。
三郎がこんなに泣きそうになっていて不謹慎かもしれないが、付き合って一年ちょっと。三郎が今まで俺に好きだと言ってくれたのは片手で数えられる程度で。
本当に一体全体なにがあったのかと思うくらいにビックリしてしまって、その反面嬉しくて。
思いのままに立ち上がって、三郎の身体を引き寄せてギューッとキツクキツク、抱きしめる。
「俺も三郎のこと、一番好きだから泣くな!!」
ついつい感情が荒ぶるままに声を張り上げてしまった。
この後クラスメイト全員にからかわれ、学校中に「あの久々知兵助が鉢屋三郎に公開プロポーズをした」という噂が流れたのは言うまでもなかった。
「キラキラ箱(携帯サイト)」のななおさんよりいただきました!!!
うひゃああああすみません調子乗ってリクしてしまいました!!!!ななおさんの鉢受小説が大好きなのですwwww
鉢子かわいいはぁはぁwwww
家宝にさせていただきます!!!!ありがとうございましたぁぁぁぁ!!!!!