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目の前にある壁


現パロ、年齢操作(雷鉢20歳くらい、兵助高校生)、微エロの三重苦です。苦手な方ご注意!!





がちゃりと開いた戸のノブは氷のように冷たい。

このまま手が張り付いてしまいそうな冷たさに眉を顰めながら兵助はそれを回した。
案の定、外の空気は一瞬で兵助の体を冷やす。
「よう。寒いな。」
兵助がなにか言う前に、すぐ隣から声がかけられた。
見ると、隣人の大学生が寒そうに彼の部屋の前に立っているところだった。
まさに今、帰ってきたところらしい。
「おはようございます鉢屋さん。寒いですね。」
「偉いねぇ高校生。朝が早くて。」
「もう七時ですよ。」
「そうそう。四時まで飲んで帰ってくりゃこんなもんさ。」
はは、と笑う顔はまだ少し酒が残っているのだろうか。いつもより明るかった。
「お前もその内一緒に飲めるといいな。」
ポン、と頭を軽く撫でて、彼は部屋に姿を消してしまった。
兵助は撫でられた頭の感触に少し俯いて、部屋から背を向ける。
子供扱いは、いつものことだ。



学校はつまらない。
進学校に行くために独り暮らしまでさせてもらえる。のではなく。
独りで暮らしたいから進学校に行った。というのが正しい。
べつに何かやりたいわけではなかったけど。家に居たくなかったから。
友人も恋人もいない。ただ気楽な生活を自分なりに楽しんでいたつもりだった。
隣人の大学生が、唯一の例外。
初めての独り暮らしは不安だろうとなにかと気にかけてくれて、無愛想な兵助によく声をかけて答えると笑みを零した。
弟が欲しかった、といつか一緒に食事をとったときに零していた。
でも、と兵助は無表情に心の中で付けくわえる。
兄さんではなく、あの人が。
胸の温かくなる笑みを零すあの人が。
ずっと隣にいてくれたらいいのに。
何度も考えたことを口に出したことはない。
兵助は何度目かのその胸中の言葉にため息を吐いて、教師が白く汚す黒板へ視線を戻した。
退屈な一日は、まだ終わっていない。


二階の部屋に上るにはどうしても足元が不安な階段を登らなければならない。
足を踏む度に音を高く響かせるそれをゆっくりと登り、ふと顔を上げた先、兵助は「あ。」と声を零した。
見知った顔が、すぐ先にある。
兵助の声に反応したのか、その顔がこちらへ向いた。
顔は、隣人の鉢屋三郎のものだ。
だが、その口には煙草が咥えられ紫煙を昇らせている。
三郎は煙草を吸わない。吸ったところを見たことは無いし部屋にも吸っている気配は無い。
では今吸い出したのかと首を傾げるが、それにしては口から煙草を離す仕草は手慣れている。
「兵助くん?」
「あの………。」
「へぇ、三郎の奴。子供は苦手って言ってたのに。」
にこりと笑む顔は、三郎のそれより穏やかなものだ。だが、兵助はその笑みの奥になにかを感じて警戒心を強めた。
「どちら様ですか?」
「ん?三郎のトモダチ。不破雷蔵っていうんだ。」
よろしくね。と手を差し出される。
それを握り返し、だが兵助は笑みを返すことなど出来なかった。
「雷蔵?誰と話してんの?」
「あ。三郎。」
「鉢屋さん。」
「ああ。兵助。お帰り!」
外での話し声が聞こえたのだろう。三郎が顔だけ玄関から出してこちらを覗いている。
その顔は兵助の知るもので、やはり目の前の男とは違う顔だ。
「ただいま。」
緊張していた顔が緩むのが、自分でも分かった。
三郎はそれににこりと笑って雷蔵へ視線を戻す。
「雷蔵。まだ煙草吸ってるのか?風邪ひくぞ?」
「大丈夫だよ。もう戻るし。」
ぎゅ、とポケットから取り出した携帯灰皿に短くなった煙草を押しこんで雷蔵が三郎の待つ部屋へ手をかけた。
「じゃあね兵助くん。」
「兵助、体冷やすなよ。」
同じ顔をした二人が同じ部屋へ帰るのを見、兵助は自分の部屋のドアへ手をかける。
この、隣のドアとの数メートルと少しの距離が、兵助と三郎の距離なのだ。
小さなため息とともに部屋のドアノブを回す。
人気の無い部屋は外の空気に侵略され冷え切っていた。吐く息も白い。
すぐに暖房のスイッチをいれ制服から適当な服に着替えようとコートに手をかける。
「……は……ね。」
「……よ。あ。雷蔵…………。」
微かに、隣の部屋の声が聞こえる。
安アパートにふさわしい薄い壁だ。すこし声を張り上げれば丸聞こえになってしまう。普通に話していたとして、微かに聞こえる程度だ。
気にするほどではない。
だが兵助は、そっと三郎の部屋側の壁に耳を押し当てた。
「三郎、気に入ってるよねあの子。かわいい?」
「からかうなよ雷蔵。私が年下を可愛がっちゃおかしいか?」
「まさか。君の面倒見のよさは知ってるよ。」
ギシ、とベッドに座ったのだろう。三郎のベッドは兵助の部屋側にある。
つまり、彼らは今、この壁を隔ててすぐ隣にいるのだ。
なにを、しているのだと自分でも思う。
こんな盗み聞きで、一体何をしたいのか兵助は自分でも理解できなかった。
ただ、初めて見た三郎のトモダチ、が気になったのかもしれない。
ギシ、ともう一つ軋む音がする。
「やだ。雷蔵煙い。」
「だってさっきまで煙草吸ってたもん。」
「美味しくないんだからな煙草なんて。まったく勘といいハチといい、煙草のどこがいいんだか。」
「三郎は甘いのが好きだもんね。」
「そういう問題じゃな、ん」
「だから三郎の口はいっつも甘い。」

「………………っ」
座っていて良かった。
もし立ったままだったら腰を抜かしていた。
(…鉢屋さんが。)
あの綺麗に笑うあの人が。
同じ顔をした男の、あの笑顔が脳裏に浮かぶ。
(…あいつに。)
「雷蔵、止めろよ。隣に兵助が、」
「大丈夫だよ。」
なんの根拠か分からない言葉を、雷蔵が吐く。
ギシ、とまた軋む音。
「大丈夫。」
笑みを含んだその声が、こちらを見透かしている気がした。


「………んっ、…………ッあ!」
「三郎、声抑えないで。もっと出しなよ。」
「あっ!やぁっ……!アァ、んぅ………!!」
ギシっギシっと断続的に軋む音。
そして、掠れるような、色を含んだ三郎の声。
懸命に抑えようとしているのかくぐもって、堪えるような声だけが耳に入る。
そして、兵助はまだ壁に耳を張りつけていて。
普通なら、離れるのに。
人の情事を覗くような真似などせず、音楽でも聴いて知らないふりをするのが普通の人間のすることだ。
だが。
だが兵助は。
ぐちゅん、と手の中で水音が響く。
はぁ、と熱い息が零れるのが、白くなって見える。
「ンッ、…………ふぁっ、や、らい………っだめ!」
「気持ちいい?三郎。後ろも前も、ぐちゅぐちゅで気持ちいいねぇ。」
「んんーッ!あっ、ひぅ!やらっらめ、らい……あんっ」
「柔らかくって、でも狭くて、お前のココも、気持ちいいよ。」
一つ言う毎に、ベッドの軋む音がする。
その正体がなんなのかなんて、分かりきっている。
「はっ、ぅぅ、らいぞ、あっ………、や、も………っ!」
「イク?もうえっちなお汁がいっぱいだけど。もっと出ちゃう?」
「あ!!やぁ、い、わな………んゃああ!!」
「だめだよ。僕も、あと少しだからもうちょっと我慢して。」
ぐちぐちと兵助の手の中のモノも零す蜜の量が増えてきた。
「ひっ、あぁ!んんっ………………!!!」
「んっ、」
「…………っ!!」
ドクリ、と自分の欲が弾けるのを兵助はじっと、呆然と見つめていた。
白濁色の欲は手を汚し床を汚し、そして壁を汚していた。
三郎の、すぐ隣の。
「……三郎は寝ちゃったよ。」
「っ!!」
ざっと自分の顔から血の気が下がるのがわかる。
ガクガクと震える手と体を抑えられない。
そんな兵助の様子を壁の向こうの雷蔵が見える訳も無く、ただ独り言のように呟いている。
「君が、三郎を好きなことなんてすぐに分かった。」
「三郎は随分と君を気に入ってるようだから、排除したりはしないよ。思うだけなら、そうして壁の向こうにいるなら、許そう。」
「だけど、その手で。」
「君の欲に濡れた手で三郎に触れてみろ。」
「この子を泣かせてみろ。」
「僕は、三郎を連れていく。お前には二度と会わせない。」
壁越しの冷たい声に、兵助がごくりと喉を鳴らす。
そして、そんな自分を奮い立たせるようにその欲に濡れた手をぐっと握った。
「俺は、鉢屋さんを泣かせたりしない。」
「貴方の元から鉢屋さんを今奪えば、確かに泣かせてしまう。悲しんできっと離れてしまう。」
「俺の欲をその為に隠すのはかまわない。」
「だけど、ずっとじゃない。」
「いつか奪う。貴方の隣から、俺の隣に。」
まだ彼には、三郎と同じ顔の彼には敵わない。そんなこと頭のいい兵助には悲しいほどに分かっている。
現在に勝負を賭ける必要はない。
将来でいい。少なくとも、自分が彼を守るために力をつけたら。
「この壁を越える。絶対。」
決意と共に、今三郎の隣にいる男に宣言する。
いつかその場所を奪うと。
雷蔵はしばらく黙り、兵助が訝し気な顔になったころにようやく気配が動いた。
「忠告はした。せいぜい、三郎に嫌われないようにね。」
ギシ、とベッドの軋む音で、雷蔵がそこから離れたのがわかった。
兵助もようやく立ち上がり自分の姿を見下ろす。
制服も手も部屋も汚れてなんとも情けない有様だ。まずは、ここを片付けなければ。
だが、今度はため息を吐かない。
この自分の現状はいつか向上させる。
まずは、三郎の好印象を保つことから。



「兵助…………雷蔵から聞いたがお前が豆腐に欲情してるって本当か?」
「!!!!」
越えるべき壁は敵により分厚くされているが、絶対に、負ける気はしない。


あとがき
久しぶりの小説がこんなんですみませ・・・楽しかったけど!!
性格の悪い雷蔵を書くのがとても楽しかったけど!!誰得!!
三郎をビッチにして勘ちゃんと竹谷とも絡ませるか迷ったけど、結局書き切れませんでした。
三郎誘い受けとか書きたいね!!
この後雷蔵と兵助が笑顔で戦争おこすととてもかわいいと思います。


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