目隠し
「あの…あのな。雷蔵。」
「ん?なに?」
間近に見る雷蔵の笑顔に、三郎の心臓が跳ねる。
だが決して甘酸っぱくはないそれを、なんとか三郎は鎮めながら口を開いた。
「なんで、私は抱えられてるんだ?」
今は学年対抗の試合中で。三郎は審判をしていたはずなのだが。
なぜか休憩時間に雷蔵は三郎を横抱きにしてその場にいた。
ああ周囲の目が痛い。
「怪我してる訳でもないし。具合も、悪くないぞ?ほんとだぞ?」
「ふふ…三郎は前科があるからね。でも知ってるよ。今日は三郎は元気だもんね。」
「なら…。」
「でも、三郎を狙う虫が減っているわけじゃあ無いんだよ。」
ニッコリと笑う雷蔵が、なんだか怖い。
「む、虫?」
「そう。」
雷蔵は抱えている体を近付けて、三郎の耳元に口を寄せ囁く。
「君を狙う虫たちをね。一気に排除しないと。」
「ひゃん!!」
耳が弱い三郎はその囁きと共に触れた吐息に体を震わせてしまう。
恥ずかしい声が出た、と雷蔵の胸に顔を埋める三郎は遠くで「てめぇ不破このやろう!!!」と騒ぐ声に気づいていない。
「ら、雷蔵…。私が耳弱いの知ってるだろう。」
「ふふふ…。ごめんね。」
「ん……。」
額に口づけを落としながらの謝罪に、三郎は頷いた。
「でも雷蔵。虫ぐらい、私も自分で叩き落とせるぞ。」
「そうだね。でも、僕が、君を守りたいんだ。」
「雷蔵……。」
「君に、汚い虫が触ることすら許せないんだよ。僕は。」
心が狭いだろ?と苦笑する雷蔵に、三郎は慌てて首を振った。
「嬉しい。」
「本当に?」
「うん。」
本心から微笑む三郎に、雷蔵が眩しそうに目を細める。
「いい子だね。三郎。」
「えへへ。」
頭を撫でられ、幼子のように喜ぶ三郎は大層可愛らしい。
雷蔵は歯噛みする周囲を牽制しながら、さらに強くその体を抱きしめる。
「三郎は、僕から離れちゃいけないよ。」
「うん!」
かわいいかわいい僕の三郎。
いつか、僕の前から逃げようとしても、決して逃がさないから。
でもそれができるだけ延びるように。
僕は君に目隠しをする。
「かわいい三郎。大好きだよ。」
あとがき
アンケで黒雷蔵様のリクがあったので書いてみたsss。
やばい楽しい黒雷蔵www
リクの逃げる三郎までは書けなかったのが残念orz
だって三郎雷蔵様の言うことうっとり聞いちゃうだもん……。