愛でる生き物



つう、と長い綺麗な指が喉を辿る。そのまま指先が顎の下までなぞり、そこでくすぐるように動いた。
「………なんのつもりだ?兵助。」
読書をしている横で、突然手が伸びてくるので何をするのかと思ったら。三郎はじっとりと横にいる豆腐小僧(一応恋人)を見やった。
兵助はそれに答えずに「うーん?」と首を傾げている。
「だから、なんだというんだ。突然意味不明な行動をするな。」
いまだに喉をくすぐり続ける兵助の手をパシリと叩き落とした。
落とされた手をひらひらと振りながら、兵助はどこか不満そうに口を尖らせる。
「三郎、さっきハチに同じことされた時は気持ちよさそうにしてたじゃないか。」
「は?え、なっ、見てたのかよ!!」
「見てた。ずるいぞハチばっか。俺だって三郎のことあんな風にしたいのに。」
あんな風、というのは先ほどハチが三郎を「猫のようだ」と言って笑っていた時のことだろう。食堂で三郎が猫舌だという話からなぜかそうなり、喉を鳴らすんじゃないかとくすぐってきたのだ。
喉は鳴らさないものの、竹谷の暖かい手は気持ち良くて、つい目を細めてしまったのを覚えている。
まさか誰かが見ているとは思わなかった。
赤くなる三郎を見つめる兵助は、怒っていないが不満そうだ。
「なんでハチは良くて俺は駄目なんだよ。」
「な、なんでって…。」
別に不義を働いたわけではないのに、三郎はしどろもどろになって目を逸らす。
そんな三郎に、再び兵助がすい、と手を伸ばす。
「なぁ、気持ち良くない?」
そろりと首筋を撫でたり、先ほどのようにくすぐったり。久々知の手は優しく三郎を愛でようとする。
(き、気持ちいいっていうより…。)
「…んっ。」
「三郎?」
「いや、あの!べ、べつに、これはその!」
赤くなる三郎の顔を見て、兵助がニヤリと笑う。
「ねぇ、三郎?気持ち良くない?」
「はっ、や、やめ。」
「なぁって。」
さわさわと兵助は三郎を撫で続ける。その手はあからさまな意思を帯びてきて、三郎はますます顔を赤くした。
「き、気持ちよくない!もう離せよ兵助!」
「…ほんとに?」
「ひゃう!」
耳元で、兵助が囁く。弱いそこに兵助の息が当たって、思わず声を上げた。身をよじって逃げようとするも、いつの間にか回された腕がそれを許さない。
「三郎、ハチ相手だと気持ちいいのに、俺だと、感じちゃうの?」
「んっ、ふぅっ、ぅ、そこで、喋るなぁ!」
「…かわいい。」
「うわぁ!」
ぱくり、と目の前にある耳を食むと、限界に達した三郎が勢いよく兵助を突き飛ばした。
あっさりと離れた兵助が立ちあがった三郎を見上げると、真っ赤な顔で食まれた耳を押さえている。
それを見た兵助はにっこりと笑って、「な、気持ちよかったろ?」とのたまり、三郎はなんだかもうぐしゃぐしゃになった頭でとりあえず目の前の頭をぶん殴っておいた。



あとがき
三郎は猫系!!との思いから生まれたsss。
思ったより短かった…。豆腐がアホなせいです。

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