闇に



ざわ
ざわ
ざわ

「……………。」
薄暗い部屋の中、孫次郎はふと顔を上げた。

ざわ
ざわ
ざわ

耳には風に揺れる木々のざわめきだけが聞こえる。ざわざわ、ざわざわと葉の触れあう音。木々が身を寄せ合い会話をしているような。忍術学園でも珍しくもない音。
しかし、孫次郎はそれに違和感を覚えた。
なにが、というわけではない。ただなんとなく、それがただの木々の立てる音ではないと分かってしまった、という方が正しいかもしれない。
「なにか、用?」
空を見つめたまま、孫次郎が呟く。
明確な誰かがそこにいるわけではない。「何か」が居るような気がして、それに声をかけたのだ。
事実、傍にいる怪士丸はきょとんとした表情のまま孫次郎を見つめていた。彼は孫次郎のような感覚を覚えることがなかった。この部屋には自分と同室の孫次郎しかいない。そのはず、だ。

ざわ
ざわ
ざわ

「そう…。わかった。先輩に伝えておくよ。ありがとう。」

ざわ
ざわ
ざわ、ざざ、ざざざざざ…

外ではただ、木々が騒いでいる。
怪士丸には、それが無数の鳥が羽ばたく音に聞こえた。
孫次郎が音もたてずに立ち上がり、すっと障子を開いた。
そこにはもちろん誰もいない。当然だ。もう子の刻に近いこの時間、1年長屋を出歩く者はいない。
風は、いつの間にか止んでいた。



孫次郎が妖怪と仲良しだったらかっこよくね?と思って…。生物委員だし!!

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