君をずっと見ていたい






「らいぞー……お……?」

「あ。三郎。お帰り。」
相変わらずノックも無く部屋に入ってくる三郎を僕は笑顔で迎えてやった。
だが三郎は、僕の顔を凝視したまま動かない。
原因は分かっているが、そこまで驚かなくてもいいんじゃないかと思う。
「………似合わないかい?」
「まさか!!!」
自信なさげに苦笑すれば真っ赤な顔で即答された。
「でも雷蔵…そんなに目、悪かったのか?」
「ちょっとね、乱視も入ったみたいで見づらかったかな。」
僕はまだ慣れないレンズ越しに三郎を見やる。
今日買った眼鏡の調子は、大分いい。
はっきりと見える三郎の驚いた顔に自然と僕の顔に笑みが浮かんだ。
「そんなに驚くことも無いだろう?」
「ああ……でも眼鏡が必要な程悪いとは思わなかった。」
「うん。僕も今朝までそう思ってた。」
首を傾げる三郎に、僕は曖昧に微笑んだ。
そこまで必要性を感じなかったんだ。
席は前の方だから不自由ないし。本を読むのだって別に苦労はない。
ただ。
思い出す。校舎の四階から見える、三郎の姿。
顔が見えなくても、シルエットで分かる。僕は偶然見つけた姿に嬉しくなってその姿を目で追った。
そして、その一方で立っていた、女子の姿。
他に人気はない。そう言えば彼が居たのは有名な告白スポットだと妙に冷えた頭で考えていた。
二人がそこで立って何か話しているのは分かる。だけど。
三郎の、顔が見えなかった。
笑っているのか怒っているのか泣いているのか呆れているのかそれとも無表情なのか。
遠くにいる、僕には見えなかった。
それが、なぜか僕に焦燥感を与え、そして放課後すぐに眼鏡屋に向かったのだ。
あまり視力の悪くない僕に店員が訝し気な顔をしたが、無理やり説得した。
今は、良く見える三郎の表情。
戸惑いに揺れる目を見て、僕の心は満足感を覚えた。
「驚いた?」
「うん。」
素直に頷いて、三郎はゆっくりと椅子に座る僕の正面へやってきてそっと僕を見下ろした。
「でも、似合ってる。」
雷蔵かっこいい。と少し赤くなった顔で笑う三郎が可愛くて、思わず抱きしめる。
さっきよりずっと近い距離で見つめる三郎の顔はうっとりと僕を見つめていて、僕はさらに腕に力を込めた。
三郎はそれに引かれるように僕の膝の上に体を乗せ、それでも顔から視線を離さない。
「雷蔵。かっこいい。」
「ありがとう。」
「大好き。」
そう言う、彼は一体どこまで分かっているのだろう。
僕は見透かされたような感覚を覚えて苦笑し、「僕もだよ。」と答えた。
その返事に嬉しそうに笑った三郎が、僕に覆いかぶさってキスを落とす。
カチン、と二人の間で眼鏡が触れあった。
……………キスするときには、ちょっと邪魔だな。
すぐに離れた三郎も同じことを考えていたようで。離れた顔は苦笑していた。
その細い指がそっと眼鏡の蔓を摘んで、僕の視界が慣れたものになる。
三郎の顔も、この距離ならよく見えた。
うっとりと、蕩け切った顔。
僕にしか見せない顔。
「三郎かわいい。」
そして、今度は僕から三郎へキスを送る。
幸せそうなその顔は、僕だけが知っていればいい。


あとがき
みじかっ!?
嫉妬する雷蔵様かっこいいそして眼鏡うまい。
眼鏡は、最高の、萌えアイテムです(アソビの中で)
もう五年全員眼鏡かければいいよ^^


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