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触れたい衝動
カタンカタン、と電車が定期的に揺れる。
それに合わせて揺れ動く体を、兵助はなんとなしに見つめていた。
脱色された薄茶色の髪は、パーマが入っているのかふわふわでとてもさわり心地がよさそうだ。
猫っ毛の自分も美容師には好かれる髪質であるようだが、どちらかと言えば今目の前にあるようなふんわりした髪が兵助は好きだった。
旋毛に穴が開きそうなほどに見つめれば、当然視線を感じたらしい彼がジロリと兵助を見上げてくる。
「あんだよ。」
「いや。綺麗な髪だなと思って。」
あの後輩の美容師のような科白に自分で苦笑する。
だが三郎は気だるそうな目を怪訝なものに変えて兵助を見た。
「綺麗っていうか?」
「綺麗だろ。今だって。」
窓から入る日に当たって、キラキラしてる。
真顔でそんなことを言う兵助を三郎が心底嫌そうに首を振ってあしらった。
「兵助。眼鏡かけろよ。」
「なに?眼鏡萌え?」
「ちっげーよ馬鹿!!!その阿呆な視力を矯正しろって言ってんの!!!」
阿呆な視力とはまた。
大きな目を瞬かせる兵助に大きくため息を吐く三郎は心底疲れたとでも言うように脱力している。
「なんなのお前。何がしたいの?」
「何がしたいって………。」
「ん?」
顔を上げた三郎の額に、そのふわりとした髪がかかる。
「……………三郎の髪に触れたい。」
そしてそっと伸ばした手で額にかかる三郎の髪を避けてやった。
ぱしっとその手を一瞬遅れて三郎が叩き落とす。
「そういうこと聞いたんじゃないんだよ阿呆。」
「ん?違うのか?」
「違うの!!ああもう降りるぞ!!!」
周囲の目が痛い。
この見目麗しい男が自分なんぞに構っているせいで跳んだとばっちりだと三郎は一人ごちる。
「三郎。」
「なんだよ。」
「顔赤い。」
「……煩い馬鹿。」
的確な指摘を一蹴し、三郎はさっさと歩きだす。
目的の駅ではない上に改札に向かうわけでもないから行くあてがあるはずもないのだけれど。
とりあえずは背後の男に顔を見られないようにひたすら足を進めるのだった。
あとがき
リハビリ第二弾。
ギャグ書きたいって思ってこれである^p^ 甘いよね。やっぱり甘いよね。
兵助はただひたすら三郎のこと無自覚に口説いてればいいと思う。