あこがれ?
とても、きれいだと思うんだ。
あの人が。
「…目の錯覚じゃね?」
「や。そうでなく。」
虎太郎は昔から変わらず思い切り顔を歪めながら不審そうに即答する。
それにまた秋も即答した。
「そうじゃなくて。…なんていうか、浮世離れしてるっていうか。」
「あー。もう社会人なのにな。全然変わってないよなー。」
まぁそれはうちの兄貴もだけど。
虎太郎の兄と平助は同い年で、同級生でもある。虎太郎と秋が出会ったのも彼らのおかげであった。
実に五歳からの付き合いであるが、その時から、秋は従兄の平助が大好きだった。
それはもう、周知の事実と言っていいほどにあからさまに大好きであった。
ただ、それが恋慕であったと気付いたのは最近のこと。
「だからさ。綺麗だと思わないか。」
「思わない。ひょろっこくて猫背でお菓子が美味いとは思うけど、綺麗だとは思わない。」
「そうなのか…。」
「秋が平助大好きなのは昔から知ってるけどさ。ほんと、あいつのどこがいいわけ?」
「どこって…優しいだろ。」
「そうか?」
「顔、綺麗だし、手も。お菓子作ってるの、見るの好きだ。」
「顔は普通だろ。垂れ目だし。まぁ菓子の腕は認めるけど。」
「ほんと、妖精じゃないかってくらい中性的じゃないか。あの人ドレスとか着せたら絶対似合う。」
「今の変態発言は聞かなかったことにしてやる。」
ずこー、と興味無さげに紙パックのジュースを啜る虎太郎をそのままに、秋はぼんやりと空を見上げた。
「秋はさぁ。」
「うん?」
「平助みたいになりたいとか思うわけ?」
「……どういう意味?」
「や。だって憧れなんだろ?平助が。俺には分からんけど。」
「………………いや。思わないな。」
「そのこころは?」
「…一応俺も平助が駄目人間なのは知ってる。そこも好きなだけで。」
「なるほど。」
「むしろ世話したい。甘やかして俺無しじゃいられなくしたい。一日中面倒みて楽させてやりたい。」
「それはますます平助を堕落させるな。」
「………俺無しじゃいられなくなればいいのに。」
でもあの人は大人だから。
無意識に自立することを知ってるんだ。こんな年下の自分なんかに支えられなくても。
「早く大人になりたいなぁ……。」
独占欲にまみれた小さな呟きは、返事も無いまま空に消えた。
あとがき
やっちまった…。flatの二人が可愛すぎて…っ!大好きなんだもん!!
佐藤くんと鈴木くんも好きです。その内書きたいな〜。