愛の方程式




「まぁまずここにある俺の愛を1としよう。」

「は?」
今ここにいる男は、私ほどではないが秀才と呼ばれている。眉目秀麗文武両道明朗快活と言えばまぁ確かに超人のようだが。
私は知っている。この男の頭の中はネジがゆるんだただの馬鹿だと。
そんな男が意味不明なことを言い出したのだから、私が警戒するのは当然だ。
絶対、ろくなことじゃない。
「もちろん俺の三郎への愛が1という数字に収まるわけもないがそこは仮にの話だから許してほしい。」
「いやどうでもいいし。」
「そこで俺の愛してやまない豆腐だが、これも三郎への愛とは種類が違うとはいえ、しかしあえて、あえて言うなら1としよう。」
「………。」
いやだからどうでもいいって。という言葉が無意味なのはすでに学んだ。
兵助は呆れた視線の私には気づかず(もしくは知らない振りをして)じっと空を見つめている。
「三郎が1で豆腐も1としたら…合わせたら2になるよな?」
「…当然だな。」
こんな会話に相づちを打ってやる私はなんて親切なんだ。
「三郎は一人だけど、豆腐ならいくらでも用意できる…。」
「ほう。」
「つまり、三郎1に対し、豆腐9ということも可能なわけだ。」
「それで…?」
ああほらもう嫌な予感しかしない。
いままで空を見つめていた兵助が、カッと大きな目を見開いて私をやけに輝いた目で貫く。
「つまり三郎を加えればそれだけ豆腐と三郎への愛がふかまブハッ!!」
「やっぱそういうオチかこの変態。なんでもかんでも豆腐に結びつけやがって。」
「と…とうふだけじゃないさ…。」
「ほう?」
腹を私に蹴られ悶絶する兵助が、額に脂汗をかきながら不適に笑う。
その表情に、一瞬鼓動が跳ねた。
ほんとに、顔だけはいい奴だ。
「豆乳だってもちろん可!!!」
「ああもうホント残念な奴だなお前!!!」
「むしろ推奨!!!!」
「黙れ!!!」
「三郎を見つめながら青臭い液を飲む俺…っ!」
「この変態!変態!!!」
ぞわぞわと這いあがってくる悪寒に思わず自分の体を抱きしめる。
逆に興奮して息まで荒くしだした兵助は本当に変態的だ。
このまま先生や上級生や雷蔵に助けを求めても、絶対に私が被害者だとわかる図だ。
だがここは奴の部屋で叫ばない限りは助けがくることもない。
「くくく…豆乳と豆腐を合わせて三郎にかけていただくのもいいなぁ…。」
「断っ固拒否する!!!」
「三郎と豆腐が合わさればますます愛が深まる…。なんてわかりやすい計算式なんだっ。」
「常識を無視すればな!!」
「俺は常識を超える!俺の愛がある限り!!」
「台詞だけかっこよくしても変態なのは変わらないだろうがっ!!」
なにやらじりじりと近づきだした兵助に、私ももちろん同じくジリジリと距離をとろうとする。
「俺がどうしてわざわざこんな話をしたと思う…?いつだって考えてることは変わらないのに。」
「お前それはもう病気だぞ。医務室に行け。」
そうしたら不運委員たちが被害を受けるかもしれないが今は知ったことか。
なにやらとてつもなく嫌な予感がする。
「それはな…。三郎に今日こそ俺の愛を証明するた」
「おーい兵助いるかー?」
ナイスだハチ!!
背後で開いた扉に笑みを浮かべ、私は素早くハチの背後へ身を隠した。
「は?あ、三郎どうしブッ!!」
「……邪魔だ。ハチ。」
「お前…人に豆腐ぶつけておいて言うことはそれだけか…?」
「俺は三郎への愛をだなl!!」
「うるっさい馬鹿兵助!お前は一度黙っとけ!!」
私はハチの背中から顔を覗かせて舌を出す。
そしてそのまま振り返らずに走り去った。
「…ちくしょうっ!!」
「おいそこの変態。悔しがるなら鼻血吹いてからにしとけ。」
ダメージを喰らったかのように膝を突く兵助と呆れた顔の竹谷を置いて。

あとがき
大遅刻久々鉢の日!!!その二。
こんどは変態な久々知できてみた。ほんきできもい。
書いてる最中もこの変態!!と叫びそうになりました。
しかし世の中の久々鉢はこれがデフォのはず!!(違

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